研究課題/領域番号 |
16K00351
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
金子 正秀 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90262039)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 知能ロボティックス / 画像・文章・音声等認識 / 人工知能 / ユーザインターフェース / 空間的な間 |
研究実績の概要 |
複数人のグループや物によって形成される様々な空間的な間を読みながら自律的に行動するロボットに関連して、以下の研究を行った。 (1)移動経路の自動生成 : LRF及び Kinectによって得られる2次元と3次元の情報を合せて、ロボットが働く環境に対するよりロバストな地図を効率良く生成できるようにした。3次元情報によって認識した壁等の不動領域は地図上に早めに反映させる。一方、人物が存在する動領域は地図上から削除する。次に、大局的手法と局所的手法を統合してロボットの移動経路の生成を行った。ダイクストラ法に基づく最終目的地までの最短経路の生成、及び、ポテンシャル場法に基づく局所的な移動により、動的な環境下での効率的な移動が可能となった。 (2)ユーザグループに対するロバストな行動検出と追跡 : ユーザグループの追跡にはMCMCパーティクルフィルタを用いる。Kinect を利用して各ユーザの服の色、顔等の個人情報を取得して個人認識を行う。その結果をパーティクルフィルタの観測尤度として利用し、他の歩行者と区別しながらユーザグループの追跡を行った。本手法を保育支援システムのための子ども行動追跡へも応用した。途中で追跡に失敗しても、ユーザの再検出によって追跡の続行が可能である。 (3)ユーザグループの動きに適応した案内行動 : ユーザグループとサブゴールに各々ポテンシャル場を生成し、他の歩行者や障害物から生成した斥力ポテンシャル場と統合する。ユーザグループの行動形態の観測及び移動方向・速度の予測を行い、統合ポテンシャル場に基づいてユーザの動きに適応したソーシャル的な案内行動を実現した。ユーザが一時的に経路から離れても、ロボットは案内モードと追従モード(最終目的地への案内を再開しやすい態勢を確保)を自動的に切替えて対応する。 (4)ドローンに対する3次元パーソナルスペースの基本的性質を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複数人のグループや物によって形成される様々な空間的な間(ま)を読みながら自律的に行動するロボットに関連して、動作環境に対する地図の自動生成、効率的な移動経路の生成、複数人のグループに対するロバストな行動検出と追跡、複数人のグループの自発的な行動に適応した案内行動の実現等の研究を着実に進めた。 特に、ユーザの動きに適応した柔軟な案内サービスを提供できるソーシャル案内ロボットに対する基本的フレームワークを構築した。これはロボットの社会性までを考慮した従来の案内ロボットにはない有用な機能である。本研究成果について学会誌論文としてまとめて投稿し、掲載された。 次に、複数人のユーザグループに対する行動検出と追跡手法に関して、子どもの保育支援システムへの応用にまで検討対象を広げた。10分以上の長い時間にわたって、20人程度までの子供の集団行動の追跡を実現した。本研究成果について学術誌論文としてまとめて投稿し、掲載された。 当初計画に含まれていなかったが、近年におけるドローンの急速な普及を鑑み、ロボット(ドローン)と人間との関係として3次元空間内での間(ま)に対する扱いに着目した研究を行った。すなわち、小型ドローンに対する人間の3次元的なパーソナルスペースについて実験的研究を行い、3次元パーソナルスペースの形状や特性を明らかにした。これは、従来にない新しい成果である。
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今後の研究の推進方策 |
複数人のグループや物によって形成される様々な空間的な間(ま)を読みながら自律的に行動するロボットに関連して、これまでの研究成果を踏まえて、更に以下の様な研究を進める。 (1)より複雑な空間的な間に対する取扱い : 環境内の人物に対して時系列的に観測し、複数人間の関係の把握を行う。互いに係わり合いのある振る舞いをしているか、無関係であるか、の判断を行う。静止している場合には、位置関係を把握する。移動している場合には、複数人の移動状況(移動方向や速度)を予測し、空間的な間の形状や移動の状況の把握を行う。 (2)多層通過可能確率分布モデル : 環境内を俯瞰できない、すなわち、ロボットから近い範囲しか詳しくは観測できない(遠くについては粗い観測しかできない)場合を取上げる。多層通過可能確率分布モデルとして、ロボットから近い場所については空間的に細かいモデル、遠い場所については空間的に粗いモデルを形成する。空間的な粒度を調整することで、同じ枠組みで近く~遠くまでを一貫して扱うことができる。ロボットの移動につれて、空間的に細かいモデルを適用できる範囲は更新されながら移動していくことになる。近い場所のモデル(細かい)と遠い場所のモデル(粗い)との動的接続方法を検討する。 (3)環境内の人物との積極的な係わり合い : 環境内の人物を単に障害物として扱うのではなく、道を譲ってもらう、スペースを作ってもらうなどの働きかけを行う。働きかけに対する人物の反応を的確に理解し、お礼を述べて通過する、どいてくれない場合には迂回路を探す、再度働きかけを行う等、状況に応じた行動を選択する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会での発表旅費の一部を別予算から手当てできたため、当初予定より旅費の使用を抑えることができた。結果として、約145千円の残額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記事情により、約145千円の残額が発生した。この残額は、次年度の物品費と合せて、自律移動ロボットベースの購入にあてる予定である。
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