研究実績の概要 |
研究代表者が提案した「支持脚から遊脚への脚相遷移に脚負荷を用いることにより姿勢制御とリズム運動制御を統合することが出来る制御器」を既存の四足ロボット「小鉄」に適用し,歩行速度に応じたwalk, trot, pace歩容間自律遷移を実現した.これは四足動物の歩容遷移を抽象的な数式のみで表現される位相ダイナミクスのレベルではなく,身体性やセンサーフィードバックと結びつけ,実世界での物理現象として説明できるレベルの仮説として提案し,ロボットを用いてその妥当性を実証したことを意味している. また,歩容遷移実験をトレッドミル上で行う際,「小鉄」がベルトから外れないように,水平面内位置・姿勢の視覚誘導を導入し,リズム運動制御への摂動に対してもこの制御器が有効であることを示すために,左右のベルト速度が異なるsplit-beltトレッドミル上での歩容適応の実験を行った.すなわち,片側のベルト速度の変化情報がPEP(Posterior Extreme Position)腰ピッチ関節角度として脚相遷移条件に入ることにより,安定した歩容すなわち脚の加負荷・除負荷パターンが不安定になり,それにともないロール面内姿勢が不安定になったとき,この手法がセンサーフィードバックにより脚間位相差を調節し歩容適応が実現された.ただし,duty比の変化等に関して除脳ネコsplit-belt適応実験結果との整合性は今後の検討課題となっている. さらに,「小鉄」では走行で現れるbound歩容の実現が難しいため,新たにバネ受動関節を持つ四足走行ロボットを製作し,シミュレーションと並行して走行でのtrot, pace, bound歩容の実現を試みたが,歩行から走行への遷移に伴う自律歩容遷移についてはまだ不十分な点が残された.
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