研究課題/領域番号 |
16K00356
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
山崎 大河 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (40364096)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関節間協調 / 仮想拘束 / 鉄棒 / つり輪 |
研究実績の概要 |
ヒトの身体運動には筋間,関節間などさまざまな要素の間に「協調」が見られる.本研究では,関節角度間の関係式として記述される仮想ホロノミック拘束を協調のモデルとみなし,その実現を制御目的に位置づけることで,運動制御に新しい見方を与えることを目標に研究を進めた. (1) 器械体操における鉄棒運動は,劣駆動性をもつためにその制御が難しい運動の例として知られている.本研究では,制御が難しい運動ほど,生体で用いられている制御機構を絞り込む研究材料に適しているとの考えに基づき,鉄棒運動に関する従来の制御モデルを以下の点で拡張した.(a) 関節トルクの発生における筋活動の遅れを考慮することで,関節トルクが不連続に変化するという従来モデルの欠点を克服した.(b) 媒介変数を使って仮想拘束を表現することで,仮想拘束の数理表現に由来した特異点をもつという従来モデルの欠点をなくした.(c) 仮想拘束の実現を目的とする複数の制御モジュールを切り替えることで,モジュール構造をもつ制御モデルを構築した.さらに,このように拡張したモデルが実際に動作することを,鉄棒での「け上がり」のシミュレーションによって例示した. (2) 器械体操におけるつり輪運動は,鉄棒運動よりも劣駆動度が高くその制御がさらに難しい運動としてモデル化される.一方,熟練者によると,つり輪において良いスイングを行なうためには,つり輪と身体の重心がつり輪の支点を通る鉛直線上を往復するように運動することが重要であるという.そこで,本研究では,つり輪運動において重心位置に関する仮想拘束を実現できる可能性を探ることを目標に,モデルの解析を行った.解析の結果,関節トルクがつり輪と身体の水平方向および鉛直方向の重心加速度に与える影響を明らかにし,つり輪運動中の姿勢には関節トルクが重心加速度に影響を与えることのできない特異点が存在することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは対象とする運動を変更している部分もあるが,仮想拘束に着目した運動制御モデルの提案については,おおむね計画通りに達成できている.
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今後の研究の推進方策 |
劣駆動性の高い運動や,駆動系に冗長性をもつ運動など,対象とする運動をさらに拡張しつつ,より一般的な制御モデルの提案を目指す予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
解析対象とする運動として立位・起立運動などを予定していたが,まずは鉄棒運動やつり輪運動から取り組むことに変更したため,物品費の使用を主とした計画の変更が発生し,次年度使用がが生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費については新たな運動計測装置の構築に充てたい.
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