研究課題/領域番号 |
16K00357
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
横田 祥 東洋大学, 理工学部, 准教授 (40434386)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感覚行動システム / 主観的移動感覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,人工物による他動的移動運動における主体的移動感覚モデルを見出し,見出したモデルから得られる主観的な速度と人工物の速度の差異を用いて,他動的移動運動における人のバランス能力を定量的に表すことにある.そのために,次の3つのサブテーマに分けて研究を推進する.(1)視覚情報,体性感覚情報,前庭感覚情報の定量表現(2)主観的移動感覚モデル論(3)動的バランス能力の定量的表現法. 本年度は,(1)の体性感覚の定量表現と(2)移動感覚モデルについて取り組んだ. まず,(1)について,立ち乗り型パーソナルモビリティビークル(PMV)を例題に検証を行った.ここでは,PMVの搭乗高さを変えたときの,被験者が感じる主観的な高さと,実際の物理的な高さとの関係について調べた.このとき,被験者が自身の足元を直接目視できないようにして,PMVの搭乗部の高さから常に一定の高さとなるように座面の高さを調整した椅子からPMVに移乗させた.これは,体性感覚ではなく,周囲の視覚情報でPMVの高さを知覚させるようにするためである.実験を行った結果,主観的な高さと物理的な高さの関係は,指数関数で表されることが分かった.次に,被験者に目隠しをさせた状態で,常に一定の座面の高さの椅子から,搭乗部の高さをランダムに変化させたPMVに被験者が搭乗し,体性感覚による高さの知覚について検証した結果,体性感覚に基づく高さと物理的な高さも指数関数で表される傾向があることが分かった. 次に,(2)の移動感覚モデルを見出すために,他動運動における人の身体モデルを,電動車いすを用いて検討した.被験者を電動車いすに搭乗させ,電動車いすを静止状態から発進させたときの,車いすの加速度と被験者の上半身の振動を計測した.この結果,被験者の他動運動における身体動作モデルは,おおよそ,2次遅れ系で近似できることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度未実施であった「体勢感覚の定量表現」を今年度で取り組むことができ,また,(2)主観的移動感覚」についても,車椅子による実験をとおして,人の他動運動におけるモデルの手がかりを得ることができた.したがって,今年度は,当初の予定通りのサブテーマに取り組むことができたためである.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,(3)動的バランス能力の定量的表現方法を中心に研究を推進する.具体的には,全方向移動可能な移動台車を製作し,移動台車と身体動揺の関係を見出す.その後,バランス能力を評価する移動台車の動作パターンを設計し,被験者の生体センシングに基づくフィードバック制御を移動台車の動作に組み込む.そして,バランス能力を向上させるような動作パターンを見出す予定である.
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