研究実績の概要 |
近年、腹腔鏡下手術の施術に伴い、手術費用と執刀医のストレスを低減し、より円滑な腹腔鏡下手術を可能にするロボット腹腔鏡の開発需要が高まっている。そこで本研究では、執刀医の脳波と眼電位により、執刀医が自分の意思で見たい視野を得られるように直観的かつ少ない動作で操作できる次世代のロボット腹腔鏡を開発することを目的としている。このために、前年度までに[a]手術動作時における外科医の生体信号の測定、[b]ニューラルネットワーク(NN)を用いた脳波による把握動作の有無及び把握動作の左右の識別、[c]サポートベクターマシーン(SVM)を用いた眼電位による不随意瞬目と随意瞬目の識別、およびNNを用いた眼電位による上下左右の眼球運動の識別、[d]先端が屈曲可能な腹腔鏡マニピュレータの製作、[e]より直感的な操作を可能にするため、映像のズームインとズームアウトを顔の前後移動で操作するコマンドの実装を行ってきた。 しかしながら、[f],[g],[h]については川崎のラボ施設の運用が厳しくなり、研究倫理の観点から外部関係者の立ち入りが困難になったため、川崎のラボ施設で実験を行うことができなかった。そこで、最終年度は、[i]脳波の識別を行う際に、独立成分分析(ICA)を行っているが、ICAには正負の不定性と順序の不定性の2つの不定性が存在することが判明し、これが識別率に影響すると考えられるため、ICAの不定性を解消するアルゴリズムを提案した。さらに、川崎ラボでの実験の替わりに、8月に北海道大学の医学研究室に腹腔鏡下手術トレーニングシステムを持参して、研修医に結紮作業を行ってもらい、その中の操作に対して腹腔鏡が映し出すべきアングルについて川村医師から助言をいただいた。その助言に基づき、視点変更時の腹腔鏡の操作方法として、腹腔鏡先端を球体の表面に沿って移動させる方法を考案した。
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