ラフ集合による関係性マイニングの情報推薦への応用に向けて、平成30年度は主に(1)関係性属性の作成に用いる属性間関係性の抽出方法の検討および(2)前年度に試作した推薦システムの観光地推薦への応用に関する研究を実施した。 (1)前年度までの研究では、ユーザの嗜好パターンを記述する関係性属性を作成する際に用いる属性間関係性は、予め与えられていることを前提としていた。今年度は、関係性属性を作成する際に用いる2個の属性の選択だけではなく、属性間の関係性を表現する2項関係も自動的に抽出する手法を提案し、更にその改良を試みた。計算機実験の結果、改良した手法は、当初の手法では抽出が困難であった属性間関係性を抽出できる可能性があることが示唆された。 (2)前年度の試作システムを、北海道内の観光地の推薦システムに応用した。北海道内の43箇所の観光地および既存ユーザ31名による観光地の評価結果を予めシステム内に組み込み、ユーザに対してランダムに2箇所の観光地を提示し、ユーザはどちらが好ましいかを選択する。この提示と選択を10回行った結果をユーザの嗜好パターンと見なし、類似する嗜好パターンを持つ既存ユーザが勧める観光地を推薦結果として提示する。被験者10名に対して実験を行った結果、作成した観光地推薦システムは、比較対象としたランダム推薦システムよりユーザに好まれやすい観光地を推薦できることが確認された。 研究期間全体を通して、(1)ユーザの嗜好が強く反映された嗜好パターンの抽出方法の提案および推薦システムへの応用、(2)嗜好の矛盾を許容した嗜好パターンの抽出方法の提案、および(3)ユーザが持つ嗜好の矛盾も感性的評価の特徴として使用可能な推薦システムの作成、に関する研究成果が得られた。この結果から、本申請で目標とする、「嗜好の矛盾を許容した情報推薦」について、最低限の成果は得られたと考えられる。
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