研究課題/領域番号 |
16K00368
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
溝上 陽子 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40436340)
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研究分担者 |
矢口 博久 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30134844)
阿山 みよし 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30251078)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 照明 / 質感 / 色知覚 / 質感照明 / 照明の拡散性 / 視覚工学 / 色彩工学 |
研究実績の概要 |
本研究は、質感の見えの忠実度と印象に基づく“質感照明評価法”の提案を目指し、その基盤として、まず照明の配光特性と光色が質感認識に与える影響を明らかにする。次に、質感照明評価に必要な測光的パラメータを抽出し、その影響を定性的・定量的に解明することを目的としている。 本年度は、照明の拡散度の変化が物体の質感認識と色知覚に与える影響を調べた。質感認識の評価実験は、ミニチュアの部屋を2つ並べて行い、一方を指向性照明で照らし基準照明とした。他方は照明の拡散度を強・中・弱の3段階で変化させた。表面の凹凸と光沢特性の影響をより体系的に評価するため、正弦波状の波を表面につけたパッチを使用した。高光沢、低光沢のパッチそれぞれに波の高さ3種類の条件で実験を行った。同じパッチを各部屋で観察し、基準照明下での見えを基準として、一対比較法により各拡散度での質感の印象の違いを調べた。その結果、照明の拡散度による光沢感の変化は凹凸があるほど大きいこと、低光沢のパッチの見えは拡散度に大きく影響を受けることなどが明らかになった。また、回帰分析により、光沢感と荒さ感は、光沢度と凹凸の深さ及び照明の拡散度をパラメータとして表せることが示唆された。 色の見えの評価実験も同様に、正弦波状の凹凸を持つパッチを用いて行った。被験者は、照明下のパッチの色と同じに見える色(対応色)を、別照明の観察ボックスに置かれたマンセルカラーチャートの中から選択して応答した。その結果、照明方法、パッチの凹凸度によらず、対応色はほぼ一定であった。したがって、本研究で用いた刺激サンプルに関しては、照明方法や凹凸の違いによりパッチ表面からの反射光は変動するにもかかわらず、色の見えは安定していたと言える。パッチ部分の輝度と色分布の解析により、鏡面反射部分の色を除外して物体表面の色を認識していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画に記載した検証は、ほぼ予定通り進んでいる。実用的でより複雑なサンプルを対象とした実践的検証の方の進捗は遅れているが、その分、より体系的に選択したサンプルを用いた条件や拡散度を段階的にコントロールした条件等、当初の予定よりも発展させた実験も行っており、全体的には、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
拡散性と指向性照明の複合効果の検討、周囲環境・観察条件の影響の検討、照明色と配光特性の複合効果の検討については継続して進めていく予定である。今後は特に、より実際的で複雑なサンプルを用いた実験を重点的に推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、旅費の使用額を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。次年度は、特任研究員を雇用することにより経費を主として人件費に当てる予定である。
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