研究実績の概要 |
最終年度は,①両腕による二次元拘束円軌道の有無による反力知覚特性への影響を健常者6名に対して測定・解析した.そして,②訓練者二名で行う協働型上肢運動リハビリテーションへの応用展開を実施した.①では,両手で操縦するハンドルに仮想的な円軌道を設定した拘束運動時と自由運動時において,操縦速度を一定として左右の粘性の大きさ(0,5,10,15 Ns/m)を変えて操縦負荷の大きさを知覚・判断させた.その結果,操縦負荷が中程度においては,拘束円運動時の方が正答率は高くなる傾向を確認した.また,手先力と上肢筋活動の関係に注目して力学的解析を実施し,拘束条件の有無による差異を確認した.②では,VR空間内のボードの傾き(ピッチ・ヨー角)を訓練者二人がペアになって左右のハンドルを自由に二次元水平面で動かして調整し,ボールをボード上のパネルを全て通過させるボール転がしタスクを作成した.そして,左右ハンドルの運動とピッチ・ヨー角の対応を変化させて,健常者4名によるペア5組に対して操縦テストを実施した.その結果,同じ操縦負荷であっても,左右ハンドルの運動とピッチ・ヨー角の対応関係によってタスクの遂行時間と手先運動は異なるが,それらの物理的指標と操作感に対する主観的評価結果には相関があることを確認した. 研究期間全体を通じて得られた研究成果を踏まえると,違和感の少ない操縦アシストを実現するには,操縦負荷の大きさに加えて,操縦パターンに対する拘束軌道の与え方と操縦方向による影響も積極的に考慮しなければならないことがわかった.そしてまた,ビジュアル・フィードバックとの連動は,操作感を向上させるために効果的ではあるが,運動アシストとのタイミング一致が重要であることも確認できた.今後の研究課題の一つとしては,上述した複数の要因を組み合わせた操縦タスクを加えて,さらなる実験的測定と力学的解析が必要であると考える.
|