研究課題/領域番号 |
16K00376
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
福島 亜理子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 非常勤講師 (30523823)
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研究分担者 |
仁科 エミ 放送大学, 教養学部, 教授 (20260010)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波 / 脳波 / ハイパーソニック・エフェクト |
研究実績の概要 |
本年度は、可聴域上限をこえる超高周波成分を豊富に含む音が間脳・中脳を含む深部脳の活動を高め心身を賦活する現象(ハイパーソニック・エフェクト)の発現強度が、超高周波成分の周波数に応じて変化する現象について、超高周波成分をこれまでよりも詳細な周波数帯域幅に分割して効果を調べるためのシステム構築および予備研究を実施した。 すなわち、これまでに研究者らが見出した、32kHz近辺~40kHz近辺を境に、より高い周波数の超高周波が可聴音と共存すると深部脳活性は高まる一方、それより低い周波数成分が共存すると深部脳活性が低下することをふまえ、100kHz前後に及ぶ超高周波成分を豊富に含む自然性の高い楽器音から、28-32kHz、32-36kHz、36-40kHz、40-44kHz帯域幅の超高周波成分を抽出するディジタルフィルターをソフトウェアを用いて作成した。それによって抽出した超高周波成分を、16kHz以下の可聴音と同時にまたは個別に呈示し、被験者の脳波α2成分から基幹脳活性化指標を算出し比較した。 6名の被験者による予備実験の結果、可聴音と28-32kHzの超高周波成分を同時に呈示した場合に、可聴音のみを呈示した場合よりも基幹脳活性化指標は低下する傾向を示した(p=0.056)。それに対して、32-36kHz、36-40kHz、40-44kHzの各超高周波成分を可聴音と同時に呈示した場合は、可聴音のみを呈示した場合と比較して、基幹脳活性化指標の低下や上昇などの明瞭な傾向は見出せなかった。 これらの結果は、先行研究において24-32kHzの超高周波成分が可聴音と共存し基幹脳活性化指標の明瞭な低下を示したこと、32-40kHzや40-48kHzではそれほど明瞭な傾向を示さなかったことと矛盾しない。ディジタルフィルターによる音源の分割、音再生システム、手順などの方法が一定の妥当性を持ち、次年度以降の研究基盤が整ったことを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度は、音源の作成や再生システムの構築など実験環境の整備を行う計画としていた。そして、それらを予定通り実現し、予備実験によってそれらの有効性を確認することができた。 実験に用いる可聴音や超高周波成分音源をフィルタリングして抽出する工程の前段階で、ソフトウェアの対応可能ファイル形式に合わせ音源のファイルフォーマットを1bit方式からPCM方式へと変換する必要のあることが分かった。これについて研究分担者が現有するハイレゾ音源編集システムを用いてファイルフォーマットの変換までスムーズに実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施した実験環境を用いて、28年度に呈示した以外の広範な周波数帯域を対象とする実験を継続し、データの蓄積をはかる。得られた結果によっては、分割帯域幅を変えて検討する実験を行う。また超高周波成分の効果が周波数によって異なるという現象が、異なる音源においても同様に観察されるかどうかを確認するために、先行研究とは異なる音源を用いて脳波計測実験を行う。呈示する超高周波成分は、基幹脳活性を低下させる可能性の高い超高周波成分(16kHz-本研究で見出された境界周波数)、基幹脳活性を上昇させる可能性の高い超高周波成分(境界周波数以上)の2 帯域に分割する。28 年度と同様の音呈示システムを用いて被験者に音源を呈示して脳波計測実験を行い、16kHzまでの可聴音のみを呈示した時と比較して、これら2 分割した超高周波成分が共存した時の基幹脳活性化指標にどのような差異を生じるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究申請時は、音源をパソコンに取り込む際、A/D変換を行う必要があると考えていたが、ディジタル録音された音源をフィルター機能を担当するソフトウェアが処理可能な形式へと変換することによってパソコンに直接取り込むことができたため、A/D変換に関わる装置とソフトウェアに関わる費用は次年度以降に繰り越すことが可能になった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、異なる種類の音源を用いて実験を行う際に、アナログ音源への対応も視野に入れ、A/D変換のための機器やプログラムの購入を検討する。
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