研究課題/領域番号 |
16K00378
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
赤松 茂 法政大学, 理工学部, 教授 (50339503)
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研究分担者 |
行場 次朗 東北大学, 文学研究科, 教授 (50142899)
伊師 華江 仙台高等専門学校, 建築デザイン学科, 准教授 (10435406)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感性インタフェース / 顔情報処理 / 3次元モデル / 顔認知 / 高次視覚印象 |
研究実績の概要 |
顔をもつ擬人化エージェントに人物の魅力、品性などの高次視覚印象をより効果的に伝達させる設計指針を得るため、顔の見え方を規定している物理的要因が人に知覚される高次視覚印象の心理量に与える影響をモデル化する研究を進めた。具体的には、顔パターンの見え方の多様性を表すモーフィングモデルに基づき、統制された高次視覚印象を生成する印象変換ベクトル法に関して、以下の成果が得られた。 1,顔の3次元アニメーションで自然な表情表出の動きを再現するために、多様な顔の表情表出にともなう変形を表現するモーフィングモデルを作成し、そのパラメータ空間内でサポートベクターマシンによって得られた印象変換ベクトルを利用して、新規人物の顔に対して発話表情の動画像を生成する手法を開発し、その評価を行った。 2,顔パターンから人物の高次印象を認識する感性インタフェースへの応用に関しては、2次元顔画像上に配置された幾つかの特徴点にGaborフィルターを施すことで得られる多次元特徴を用いて、人物の年齢に関する印象の自動認識を行うシステムの構築に引き続き取り組み、年齢推定精度の向上という成果が得られた。 3,顔表象に対する高次印象判断時の観察行動の分析に関しては、顔の印象の人為的な変化が人の記憶や認識に及ぼす影響を明らかにすることを目的に、再認成績と視線運動の観点から検討を行なった。まず、印象をポジティブ方向とネガティブ方向にそれぞれ操作した顔画像について再認実験を実施した。記銘を行なった顔画像に対して印象操作を施した顔をもとの人物と同一とみなすかに焦点を当てて分析を行った結果、ネガティブな印象が強められるような印象操作によって、顔の再認成績が低下することが明らかになった。また、その際の視線運動については、顔の印象の種類や操作方向よりも個人による記憶の方略の違いの影響が大きい可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顔表象に対する高次印象判断時の観察行動の分析に関しては、異なる印象判断時の被験者の視線停留点位置の時系列的な変動を、隠れマルコフモデルのパラメータによってモデル化するという当初計画の検討はまだ緒に就いたばかりで、明確な方向性は得られていないが、前項3に示したように、顔画像に対する人為的な印象操作が再認成績に与える影響に関する検討では興味深い実験結果が得られて、予想を超える研究成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、3次元顔を3Dプリンタで可触化することにより、視覚と触覚によって想起される高次印象間の関連性を明らかにするために、平成29年度から触覚によって異なる人物の3次元顔の違いを識別する予備実験を開始する予定であった。しかしながら、平成28年度に3Dプリンタによる3次元顔形状の可触化の可能性について調査検討を実施したところ、本プロジェクトで導入可能なレベルの3Dプリンタでは、実際の顔とほぼ等尺度で、且つ、触感によって微妙な印象判断も可能となるような正確な形状や質感を再現することは困難でなかろうかという結論に達した。一方で、3次元顔表象取得の手段として、Kinect V2に代表されるRGB-Dカメラの高精度化・高機能化は著しいものがあり、これらを積極的に導入することによって、3次元顔を入力として、その高次印象の認識・変換を実現する感性インタフェースシステム構築の可能性が高まると考えられる。そこで本研究では、人の触覚による印象判断の特性を解明する実験計画を取り下げ、その分のリソースを、最新のRGB-Dカメラの導入による3次元顔表象取得の高度化に充てることにしたい。なお、サポートベクターマシンにもとづいて導入された印象変換ベクトル法の評価や、顔の印象判断時の視線の動きのモデル化については、当初の計画どおりに進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
例年、ヨーロッパで開催される視知覚に関する国際会議European Conference on Visual Perception (ECVP)において、顔画像に対する印象操作が再認成績に与える影響に関する研究成果を報告する計画であったが、データ解析に予想外の時間を要したため、投稿の〆切に間に合わなかったため、次年度の同会議に参加して発表することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に参加を見送ったECVP の次年度の会議(2017年8月にドイツ、ベルリンで開催)に参加して、成果発表を行うための海外出張旅費にあてたい。
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