研究課題
CTCFは、クロマチン相互作用のアンカーでForward-reverseの向きで多くDNAに結合する。またエンハンサーの働きをクロマチンループ内の遺伝子に制限するインシュレータとして働く。本研究ではCTCFのように遺伝子の上流および下流にForward-reverseやReverse-forwardの向きで多く存在し、インシュレータとして機能し、遺伝子の転写発現量に影響するDNA結合配列を探索するための手法を開発した。公共データベースの実験データを用い、転写因子のDNA結合配列を様々なデータベースや論文から収集した。ヒトの単球やT細胞、乳腺上皮細胞、神経前駆細胞において、CTCFと共にクロマチン相互作用に関わるコヒーシン(RAD21, SMC3)のDNA結合配列も向きの偏りを示し、他のクロマチン相互作用に関わる転写因子(YY1, ZNF143)も向きの偏りを示した。約100の転写因子が4種類の細胞において向きの偏りを示し、転写発現量に影響することが示唆された。向きの偏りを示さないで、転写発現量に影響する転写因子は少数しか予測されず、特徴的な傾向が明らかになった。また同様の手法を用いて、既知の転写因子のDNA結合配列だけでなく、オープンクロマチン領域にあるDNAモチーフ配列をk-mer法により探索し、遺伝子発現量に影響する配列を予測した。エンハンサーやプロモーター活性に関わるヒストン修飾(H3K27ac)のピークのゲノム上の位置と重なるオープンクロマチン領域のみを用いて、DNAモチーフ配列の遺伝子発現量への影響を調べると免疫細胞では発現量がより高い傾向となり、H3K27acのピークと重ならないオープンクロマチン領域にあるDNAモチーフ配列は遺伝子発現量への影響が少ないことが分かり、DNAモチーフ配列の遺伝子発現量への影響がエンハンサー活性と関わることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
CTCFのように遺伝子の上流および下流にForward-reverseやReverse-forwardの向きで多く存在し、インシュレータとして機能し、遺伝子の転写発現量に影響するDNA結合配列を探索する手法について、論文投稿をした。エンハンサーに結合する転写因子が発現を制御する遺伝子を予測するために、統計的な手法以外に深層学習を用いた手法について調べ、解析を始めた。
深層学習を用いた手法は、エンハンサーやプロモーターに結合する転写因子以外の因子も複合的に解析し、遺伝子発現との関わりを予測できる可能性がある。クロマチン相互作用やインシュレータ機能に関わる転写因子についても解析できるか検討したい。これらの解析結果をもとに転写制御カスケードを予測する方法についてまとめる。さらにより高精度に予測できるかを検討したいと考えている。予測結果の実験による検証も進めたいと考えるが、研究費や時間等の都合で本研究課題だけでなく、別の機会となる可能性がある。予測のための手法やモデル、予測結果を、論文としてまとめる。公共データベースに蓄積されている様々な実験データを研究に活用することもさらに考えたい。
別の研究費の補助があり、使用額の一部に用い、私費で支払いをしていた学会参加費用等に当てることができるため。学会参加費用とパソコンのソフトウェアの購入に使用したい。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
Biosci. Biotechnol. Biochem
巻: 84 ページ: 305-313
10.1080/09168451.2019.1677451
bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/290825