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2020 年度 実施状況報告書

統計モデルによるゲノムワイドな遺伝子転写カスケード解析法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K00387
研究機関大阪大学

研究代表者

大里 直樹  大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教(常勤) (50509536)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2022-03-31
キーワード転写制御 / 転写因子 / 遺伝子発現 / エンハンサー / クロマチン相互作用 / CTCF / オープンクロマチン / エピゲノム
研究実績の概要

CTCFは、クロマチン相互作用のアンカーでForward-reverseの向きで多くDNAに結合する。またエンハンサーの働きをクロマチンループ内の遺伝子に制限するインシュレータとして働く。
本研究ではCTCFのように遺伝子の上流および下流にForward-reverseやReverse-forwardの向きで多く存在し、インシュレータとして機能し、遺伝子の転写発現量に影響するDNA結合配列を探索するための手法を開発した。公共データベースの実験データを用い、転写因子のDNA結合配列を様々なデータベースや論文から収集した。ヒトの単球やT細胞、乳腺上皮細胞、神経前駆細胞において、CTCFと共にクロマチン相互作用に関わるコヒーシン(RAD21, SMC3)のDNA結合配列も向きの偏りを示し、他のクロマチン相互作用に関わる転写因子(YY1, ZNF143)も向きの偏りを示した。約100の転写因子が4種類の細胞において向きの偏りを示し、転写発現量に影響することが示唆された。向きの偏りを示さないで、転写発現量に影響する転写因子は少数しか予測されず、特徴的な傾向が明らかになった。
また同様の手法を用いて、既知の転写因子のDNA結合配列だけでなく、オープンクロマチン領域にあるDNAモチーフ配列をk-mer法により探索し、遺伝子発現量に影響する配列を予測した。エンハンサーやプロモーター活性に関わるヒストン修飾(H3K27ac)のピークのゲノム上の位置と重なるオープンクロマチン領域のみを用いて、DNAモチーフ配列の遺伝子発現量への影響を調べると免疫細胞では発現量がより高い傾向となり、H3K27acのピークと重ならないオープンクロマチン領域にあるDNAモチーフ配列は遺伝子発現量への影響が少ないことが分かり、DNAモチーフ配列の遺伝子発現量への影響がエンハンサー活性と関わることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CTCFのように遺伝子の上流および下流にForward-reverseやReverse-forwardの向きで多く存在し、インシュレータとして機能し、遺伝子の転写発現量に影響するDNA結合配列を探索する手法について、論文投稿をした。
エンハンサーに結合する転写因子が発現を制御する遺伝子を予測するために、統計的な手法以外に深層学習を用いた手法について調べ、解析を始めた。

今後の研究の推進方策

深層学習を用いた手法は、エンハンサーやプロモーターに結合する転写因子以外の因子も複合的に解析し、遺伝子発現との関わりを予測できる可能性がある。クロマチン相互作用やインシュレータ機能に関わる転写因子についても解析できるか検討したい。
これらの解析結果をもとに転写制御カスケードを予測する方法についてまとめる。さらにより高精度に予測できるかを検討したいと考えている。
予測結果の実験による検証も進めたいと考えるが、研究費や時間等の都合で本研究課題だけでなく、別の機会となる可能性がある。
予測のための手法やモデル、予測結果を、論文としてまとめる。公共データベースに蓄積されている様々な実験データを研究に活用することもさらに考えたい。

次年度使用額が生じた理由

別の研究費の補助があり、使用額の一部に用い、私費で支払いをしていた学会参加費用等に当てることができるため。学会参加費用とパソコンのソフトウェアの購入に使用したい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Long non-coding RNA 2310069B03Rik functions as a suppressor of Ucp1 expression under prolonged cold exposure in murine beige adipocytes.2020

    • 著者名/発表者名
      Iwase M, Sakai S, Seno S, Yeh YS, Kuo T, Takahashi H, Nomura W, Jheng HF, Horton P, Osato N, Matsuda H, Inoue K, Kawada T, Goto T
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol. Biochem

      巻: 84 ページ: 305-313

    • DOI

      10.1080/09168451.2019.1677451

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Discovery of biased orientations of regulatory motifs affecting transcription of human genes and including known insulators2020

    • 著者名/発表者名
      Osato N
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/290825

    • オープンアクセス
  • [学会発表] ヒト転写因子の標的遺伝子の特徴とエンハンサー・遺伝子相互作用に影響する転写因子の発見2020

    • 著者名/発表者名
      大里直樹
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 脂肪細胞におけるSTAT3を介したUCP1発現制御機構の解明2020

    • 著者名/発表者名
      疋田菜光・岩瀬麻里・川原崎聡子・酒井章子・坂本智弥・大里直樹・瀬尾茂人・野村亘・高橋春弥・松田秀雄・井上和生・河田照雄・後藤剛
    • 学会等名
      日本栄養・食料学会近畿支部大会
  • [学会発表] ヒトのオープンクロマチン領域に存在する転写因子DNA結合配列の網羅的な解析2020

    • 著者名/発表者名
      大里直樹
    • 学会等名
      日本遺伝学会第92回大会
  • [学会発表] ヒト転写因子の標的遺伝子の特徴とエンハンサー・遺伝子相互作用に関わる転写因子解析2020

    • 著者名/発表者名
      大里直樹
    • 学会等名
      第9回生命医薬情報学連合大会
  • [学会発表] ヒト転写因子の標的遺伝子の特徴とインシュレータ機能に関わるDNA配列の発見2020

    • 著者名/発表者名
      大里直樹
    • 学会等名
      遺伝学会春季分科会
  • [学会発表] Discovery of directional chromatin-associated regulatory motifs affecting human gene transcription2020

    • 著者名/発表者名
      Naoki Osato
    • 学会等名
      RECOMB/ISCB conference on regulatory & systems genomics with dream challenges 2020.
    • 国際学会
  • [学会発表] Discovery of biased orientations of regulatory motifs affecting transcription of human genes and including known insulators2020

    • 著者名/発表者名
      Naoki Osato
    • 学会等名
      Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology (ISMB)
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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