研究課題/領域番号 |
16K00389
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
原田 耕治 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40390504)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HIV-1 / エイズ / 代替療法 / 数理モデル / コンピュータシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、変異原によりHIV-1遺伝子に変異を誘導することで遺伝子を破壊し、ウイルス産生を抑制する「致死的突然変異生成法」の考えに基づいたエイズ治 療法の基礎理論を確立することを目的としている。エイズの根治を困難にさせている要因として、寿命の長いHIV-1 潜伏感染細胞(半減期が約44 か月)の存在が 指摘されており、既存の治療法(HAART)ではこれらの細胞を体内から排除できないことが問題になっている。平成29年度は、致死的突然変異生成により潜伏感染 細胞を体内から根絶するための数理的条件を明らかにしたが、この結果はHIV-1に対する免疫の効果を陽に含んでいない点が不十分であった。治療に役立つ、より精度の高い定量的予測を可能とする数理的条件を得るため、平成30年度は免疫の働きを考慮したHIV-1感染数理モデルを構築し、免疫力の強化が潜伏感染細胞の排除に与える影響について計算機シミュレーションを行い検討した。具体的にはHIV-1特異的傷害性T細胞のダイナミクスを考慮したHIV感染数理モデルを構築し、計算機シミュレー ション実験により変異原投与後のHIV感染細胞数等の増減の時間変化を調べた。その結果、潜伏感染細胞を完全に排除することはできないが、ウイルスの過剰な増殖を抑制できる、いわゆる「免疫」状態が存在し、免疫の活性度を高めることで、免疫状態が安定化することを明らかにした。しかしながらその一方で、変異原の効能によっては免疫状態が不安定化することが判明し、体内で免疫状態を維持するには、免疫の活性度と変異原の効能がある一定の数理的条件を満足する必要があることを示した。平成29年度の研究成果は国際会議AROB2019で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果が出てきたことに伴い、国際会議・国内学会での発表件数が増えてきているが、国際論文誌への論文投稿が未達である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、致死的突然変異生成法における免疫効果について研究を進めると同時に、これまでに得られた研究成果をまとめ国際論文誌への投稿準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、当初見込んでいた論文投稿費用(英文校正費を含む)に相当する研究予算が未執行だったためであり、この予算は本年度において論文投稿および国際会議参加費用として使用する予定である。
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