研究課題/領域番号 |
16K00393
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
鈴木 新 和歌山大学, システム工学部, 講師 (20586367)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 収縮期血圧 / 脈波 / PPG / CAVI / 特徴抽出 / 統計解析 |
研究実績の概要 |
脈波の波形形状から血圧との関係性の強い特徴を抽出し、それらを用いて血圧を推定するカフレス血圧推定の研究に取り組んだ。特にスマートウォッチなどのウェアラブル端末がこれからの健康管理の標準的機器になると考え、手首の脈波に注目した。これらの脈波は体表面に照射された光によって測定された血流の変化を電気信号として記録したものであり、指尖や耳たぶなどの身体末梢部において取得しやすい傾向がある。当該年度では手首の脈波の取得を様々な方法で確認したが、実用的な脈波センシングシステムでは末梢部のように十分な光量が身体内部から得られずに明瞭な脈波波形を得ることは難しく、末梢部の脈波波形との比較に関する研究を行った。 大きな研究成果としては、従来の波高比と異なる特徴(レベルクロッシング特徴)を抽出し、波形形状をより正しく取得する手法を開発した。またこの特徴を利用した収縮期血圧の推定、リアルタイム波形処理アルゴリズムの開発、サンプリングレートと脈波波形形状の関係性の調査、などの論文を発表した。血圧とは異なるが血管の硬化状態を評価する指標であるCAVI(Cardio Ankle Vascular Index)と開発したレベルクロッシング特徴の関係性の調査も行い、高い精度でCAVIの推定が可能なことも確認できた。 このように研究の成果を上げたが手首の脈波に関する研究としては十分ではない。また末梢部の脈波についても、波形形状がセンサーとの接触状態によって大きく変化することが分かっており、接触状態によらず安定した脈波波形特徴を抽出する手法の開発が次の課題になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手首の脈波を用いた血圧推定については大きな進捗がなかったが、その比較される脈波として末梢部の脈波を用いた種々の研究は大きく前進した。現在までに本研究課題の論文を5本発表し、1本が投稿中となっており、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、投稿中の論文掲載がある。本年度の後半に2本の論文を投稿しており、1本は掲載が確定した。残る1本が投稿中であり、現在は査読意見を確認中である。査読者の指摘に従い、論文の価値を正しく説明することで掲載まで持っていけるものと考えており、次年度にて掲載されると考えている。 また本研究課題にて得た知見をさらに発展させて、新しい脈波の解析手法、健康状態の推定に関する研究に取り組むために、本研究課題で得た知見のまとめに取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿および査読が予定通りに進まず、研究期間内に終了しなかったために次年度使用額が生じた。投稿していた2本の論文のうち1本は掲載が決定し、残りの1本は現在査読中である。査読者の意見に従い、しっかりと良い論文になるように修正を進めていく。 次年度使用額の使用計画は、これらの論文の掲載料と校正費用として使用する。
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