研究実績の概要 |
社会性を持った動物は、集団として高い環境適応能力を有し、効率の良いコロニー維持機構を持っている。社会性昆虫であるミツバチの社会性を解明するためには、「個体」と「集団」という2つの観点から巣内での役割やその分布の変化を長期に渡って、観察・解析する必要があるが、このような報告はまだない。我々がこれまでに複数個体同時追跡プログラムK-Track(Kimura et al., 2014)を開発してきた。本研究では、K-Trackで得られる個体ごとの正確な位置情報に、動物行動学者が持つ個体の行動分類の知識を組み込んだ行動解析プログラムの開発を目的としている。 平成30年度の実施課題は「行動解析支援プログラムの開発」である。K-Trackのアルゴリズムに、動物行動学者によって定義された行動パターンを基にした行動分類アルゴリズムを実装し、昆虫を対象とした行動解析支援プログラム開発を行った。共同研究者から提供された行動パターンから行動分類アルゴリズムを開発し、K-Trackに実装した。開発したプログラムでは、1)アリーナ上での複数個体の映像からフレームごとの位置を検出する、2)個体ごとの位置情報を移動軌跡とし、定義した行動パターン分類を行う、という2つのことが自動でできる。また、実施課題を実施する中で、ミツバチの行動については順方向映像を用いるよりも、逆方向映像から移動推定する方がうまく推定できることがあることがわかった。K-Trackの移動追跡を順方向映像だけでなく、逆方向映像を用いた移動推定手法を提案した。本研究の成果は、システム制御情報学会論文誌に採択・掲載された。また、日本比較生理生化学会第40回大会や第8回ミツバチシンポジウムにて、口頭発表、ポスター発表を行った。課題であった「行動解析支援プログラムのプロトタイプ開発」はできたものと考えている。
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