研究課題/領域番号 |
16K00403
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
諏訪 牧子 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30242241)
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研究分担者 |
池田 修己 青山学院大学, 理工学部, 助教 (20415772)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / GPCR / Gタンパク質 / バイオインフォマティクス / 分子シミュレーション / 機械シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、GPCRとGタンパク質の選択的共役に寄与する立体構造上の特徴領域を抽出するため、GPCR-Gタンパク質結合状態の立体構造におけるGPCRとGタンパク質の相互作用の解析を行うが、特に当該年度(平成29年)は、アドレナリン受容体(AR)のサブタイプ(α1B, α1D タイプ:Gq/11に結合、α2A, α2B, α2Cタイプ:Gi/oに結合、β1タイプ:Gsに結合)を解析した。サブタイプ間の配列類似性は、約70%と非常に高いのにも関わらず、互いに異なるGタンパク質と結合する。この原因となる領域を探るため、複合体でβ2AR側の構造を比較モデリングで上記のサブタイプに置き換え、その各々に対しGα側も様々な種類に換えた構造モデルを作り、同様な相互作用プロファイルを作成した。9種類の複合体を比較すると、ポテンシャルエネルギーが高い順にα1DAR>α1BAR>α1AAR>α2BAR>βAR>α2CAR>β1AR>α2AAR>α3ARとなり、α3ARでモデリングした構造が最も安定度が高かった。 また、相互作用プロファイルではARサブタイプ内及びサブタイプ間で、構造上では共通した位置にあり、比較的強い相互作用を示した残基ペアがいくつか存在した。サブタイプ間で共通した部位はARとGタンパク質が結合する際に重要な部位であり、サブタイプ内で共通し、サブタイプ間で異なる部位はARとGタンパク質の結合選択性に大きく関わる部位であると考えられる。これらを総合して、ARとGタンパク質との親和性や結合選択性の違いは、斥力の違いによるものではなく、イオン結合が大きく関与していると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、大量の文献やDB調査と配列解析、立体構造解析を組合せ、GPCRへのGタンパク質の選択的共役に寄与する特徴領域のデータを収集した。結合リガンド分子―GPCR―共役Gタンパク質種の組合せが明らかなデータを収集し、GPCRとGタンパク質の接触領域のアミノ酸に電荷、疎水性指標、等電点などの特徴量を割り当てGPCRとGタンパク質をベクトル化表現した。リガンドについては、公共デーベースから得て、分子量、疎水性値、電荷などの特徴量を要素にしたベクトルで表現した。 GPCRとGタンパク質の選択的共役に寄与する立体構造上の特徴領域を抽出するためGPCR―Gタンパク質結合状態の立体構造を解析した。平成28年度にはGsとβ2アドレナリン受容体(AR)複合体構造に対しGタンパク質を比較モデリングで16種のGαに変えた複合体のポテンシャルエネルギーを計算したが、その順位は高い順にGα12>Gαt1>Gα11>Gαo1>Gαq>Gαi2>Gαi3>Gαi1>Gαz>Gα14>Gα13>Gαs>Gα15>Gαolfとなり、天然構造よりもGolfが最も安定度が高かった。この結果は生化学実験結果とよく一致し、分子動力学計算が有効であると示唆された。 ARは、β2ARの他にも様々なサブタイプが存在する。29年度はβ2ARとGαとの複合体でβ2AR容体側の構造を各サブタイプに置き換え、さらにGα側も様々な種類に換えた構造モデルを作り相互作用プロファイルを作成した。これら複合体を比較するとポテンシャルエネルギーが高い順にα1DAR>α1BAR>α1AAR>α2BAR>βAR>α2CAR>β1AR>α2AAR>α3ARとなり、αARでモデリングした構造が最も安定度が高かった。相互作用プロファイルからARサブタイプ内で共通した相互作用部位とGタンパク質結合選択性に関わる相互作用部位が同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成30年度)は、平成28年度、29年度に得た特徴領域のデータをパラメータにして、GPCR-Gタンパク質の共役現象をモデル化し、このモデルを基に現実のGPCR-Gタンパク質共役状態を再現できるような高精度な予測プログラムを開発する。 これまでに作成した複合体ベクトルの要素(特徴量)に、分子動力学計算で得た相互作用プロファイルや水素結合ネットワークの形などの特徴量を加え、新たな複合体ベクトルを作成する。これをGαの共役タイプ(単独のGαが共役、複数種のGα種が共役する場合の共役Gα種)に分類、整理して学習セットとする。ベクトルの要素の組合せを体系的に変え、多変量解析や主成分分析などにより、学習セットの分類を再現する最適な特徴量を上位から列挙する。これらを基に共役選択性のメカニズムを考察・モデル化して、各特徴量の妥当性、重みづけを考察する。この段階で如何に良い特徴量を選べるかが、最終的な予測精度を向上させる鍵となる。ここで得た上位特徴量をベースにして、機械学習法(サポートベクターマシン(SVM))を用いて、複合体ベクトル中の最適な要素(特徴量)をさらに絞り込む。ここでは、機械学習法のパラメータを振り、学習セットの分類精度を最適化し、その時のパラメータを決定する。SVMでは、このパラメータは、分類平面に相当するカーネル関数の種類と形の係数、特徴量の組合せ方などである。以上の学習段階で決定された最適な分類平面と最適特徴量セットを用いて、共役Gタンパク質が不明の複合体状態(ベクトル)を分類予測する。GPCRをベクトル化するための各要素はアミノ酸配列から得られる一方で、リガンドとGタンパク質共役タイプをベクトル化するための要素を共に変数にすれば、リガンドの特徴とGPCR配列を入力するとGタンパク質共役タイプを出力するプログラムが完成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、分子動力学計算統合ソフトとしてMOEを利用する。これは年間ソフトウェアライセンスとして毎年購入する必要がある。しかし高額であり当初交付予定を受けていた3年目の予算(90万円)では購入が困難であるため、2年目から積み立てることにより、最終年度もライセンスを購入できるよう計画した。本件は、その積立費用であり、ライセンス費用のみではなく、謝金、旅費等も含む。
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