海馬歯状回における空間情報と非空間情報の学習時に、集中・注意が働くとその学習は強化されることを解明し、さらに、刺激中のbaseline amplitudeに注目して学習増強メカニズムの検証を行った。 空間情報はMedial Perforant Path (MPP)から、非空間情報はLateral Perforant Path (LPP)から、顆粒細胞へ投射している。MPPにおけるSpike-timinig dependent plasticity (STDP)はアセチルコリン(ACh)の作用によって増強し、一方LPPにおいては、多少のAChではSTDPは見られるものの、十分なAChが働くとSTDPは消失した。しかしこれらの結果は、STDPの大きさはpostシナプスのカルシウム量に従いBCMルールで決定するという過去の研究から説明できるため、AChによってSTDPは強化することが分かった。次に、STDP誘導刺激中のダイナミクスに注目してAChによるSTDP増強メカニズムを検証した。その結果、MPPにおいてはbaseline amplitudeがAChの作用によって上昇したが、LPPにおいては変化が見られなかった。つまり、MPPとLPPではSTDP増強のメカニズムは異なり、MPPでは、baseline amplitudeが関与していた。 本研究結果から、空間情報と非空間情報を統合する顆粒細胞においてAChが働くと各情報は強く学習できるが、それぞれのメカニズムは異なっていることが分かった。このことは、歯状回で見られる各情報の統合に、集中・注意が異なるメカニズムでその情報に強弱を付け、適切な関連性を持たせて学習している可能性を示唆している。
|