研究課題/領域番号 |
16K00417
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
前田 康成 北見工業大学, 工学部, 教授 (30422033)
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研究分担者 |
堀井 俊佑 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00552150)
松嶋 敏泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30219430)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 商品推薦システム / 顧客クラス / 新規顧客問題 / マルコフ決定過程 / 統計的決定理論 / ベイズ基準 / 動的計画法 |
研究実績の概要 |
従来から商品推薦システムでは、同じクラスに属する顧客は同様の商品を購入すると仮定して、顧客や商品の類似度に関する分析結果を商品の推薦に利用している。本課題では、顧客や商品の類似度に関する分析を空間的分析と呼んでいる。 また、商品を推薦する本来の目的は売上高の最大化であり、目的を達成するためには商品の推薦と推薦後の顧客の行動(購入/未購入)を時間軸でとらえて分析し、顧客を購買行動へ誘導するような商品を推薦する必要がある。本課題では、このような顧客の誘導を時間的制御と呼んでいる。 本課題では、空間的分析と時間的制御を融合した商品推薦問題において、マルコフ決定過程を用いて定式化し、売上高を最大化する次世代商品推薦システムのための基礎理論を構築することを目的としている。 前年度に、ある商品推薦問題について検討済であるが、今年度はさらに別の商品推薦問題について検討した。 履歴情報などの事前情報がない新規の顧客に対応するための新規顧客問題がある。従来から新規顧客に何らかの質問をする空間的分析は検討されているが、時間的制御と融合させて売上高を最大化するような質問方法は未検討である。そこで、本課題では、所属クラス(時間的に変化しない固定クラスと仮定)が未知の新規顧客に対して初回のログイン時に適応的に所定数の質問をした後に商品の推薦を実施する、空間的分析と時間的制御が融合した商品推薦問題をマルコフ決定過程によって定式化した。定式化された問題に対して、初回ログイン時にはベイズ基準のもとで売上高を最大化するための質問を適応的に選択し、質問後は売上高を最大化するための推薦商品を選択するベイズ最適な質問および商品推薦方法を算出する動的計画法を用いた提案アルゴリズムを導出した。さらに、数値計算例によって提案アルゴリズムの検証も行い、その有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実施計画では平成28年度は空間的分析と時間的制御を融合させた商品推薦問題の定式化を行うこととし、平成29年度の実施計画として空間的分析方法の提案と空間的分析と時間的制御を融合させた商品推薦方法の提案を挙げ、平成30年度の実施計画として提案方法の検証を挙げていた。 他方、実績としては既に平成28年度に顧客のクラス変化を考慮した拡張モデルにおける顧客の所属クラスが未知という問題設定に対して、売上高をベイズ基準のもとで最大化する定式化を行い、実際にベイズ最適な推薦商品を算出する動的計画法を用いた提案アルゴリズムを導出した。さらに、数値計算例によって提案アルゴリズムの検証も行い、その有効性を確認済である。平成29年度については上記のとおり、新規顧客問題を対象に初回ログイン時には質問を適応的に選択し、質問後は売上高を最大化するための推薦商品を選択するベイズ最適な提案アルゴリズムを導出した。さらに、数値計算例によって提案アルゴリズムの検証も行い、その有効性を確認済である。 このように、実施計画では平成28年度に定式化した空間的分析と時間的制御を融合させた1つの商品推薦問題に対するアルゴリズムの提案を平成29年度の計画としていたが、実績では平成28年度および平成29年度でそれぞれ異なる2つの空間的分析と時間的制御を融合させた商品推薦問題の定式化/アルゴリズムの提案/提案方法の検証を実施している。よって、進捗としては当初計画以上に進展していると判断する。 なお、実施計画では研究の進行を容易にするために先に空間的分析方法を単独で提案した後に空間的分析と時間的制御を融合させた方法を提案することを想定していたが、実績では融合させた問題のみ検討した。融合の検討結果から空間的分析方法のみを切り出すことは容易であり、現状では単独での検討は不要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、顧客のクラス変化を考慮した拡張モデルにおける顧客の所属クラスが未知という問題設定のもとで検討を進め、定式化・提案アルゴリズムの導出・検証をおこなった。平成29年度には、新規顧客問題を対象に検討を進め、定式化・提案アルゴリズムの導出・検証をおこなった。 平成28年度および平成29年度の検証結果より、利用する各種確率モデルの真のパラメータが未知の場合の機械学習問題など、検討すべき課題が多々存在することも明らかになった。確率モデルの未知パラメータの機械学習については利用できる学習データ(履歴データ)が完全データ(顧客クラスも観測可)の場合と不完全データ(顧客クラスは観測不可)の場合の両方が想定される。学習データに不完全データを含む機械学習は半教師付き学習と呼ばれる。 そこで、本研究課題の今後の推進方策としては、検討の必要性が明らかになった完全データと不完全データが混在する半教師付き学習の視点から、平成28年度の顧客のクラス変化を考慮した商品推薦問題と平成29年度の新規顧客問題を見直したい。具体的には、顧客のクラス変化を考慮した商品推薦問題における半教師付き学習アルゴリズムおよび新規顧客問題における半教師付き学習アルゴリズムを検討する。未知パラメータの学習後には平成28年度および平成29年度に導出済の提案アルゴリズムを利用する。具体的には学習結果の推定パラメータを平成28年度および平成29年度に導出済の提案アルゴリズムに代入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】 研究代表者が2017年度内に複数回入院(計約3ヶ月間)したことにより、研究代表者の出張(旅費)および書籍購入(物品費)の一部に遅れが生じた。また、研究分担者の出張(旅費)の一部に遅れが生じた。 【使用計画】 2017年度までの提案済のアルゴリズムの検証および改良(改良アルゴリズムの提案、検証)に必要な計算機購入、書籍購入、出張、論文発表等に使用する。
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備考 |
(1)は北見工業大学の産学連携用の研究シーズ紹介Webページです。研究シーズ一覧中の本課題代表者の前田のシーズ「様々な産業に貢献可能な柔軟な知識情報処理技術」中で本課題を紹介しています。 (2)は北見工業大学の研究室紹介用Webページです。「情報システム」配下の「人工知能」配下の「知識情報処理研究室」が本課題代表者の前田の研究室で、紹介内容に本課題が含まれます。
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