研究課題/領域番号 |
16K00420
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
大囿 忠親 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324475)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リアルタイム協調編集 / 多層Canvasレイヤー |
研究実績の概要 |
リアルタイムな同期に基づくWeb協調作業において、ユーザにとって認知負荷の低い同期アルゴリズムに必要な要素技術を明らかにするために、同期に伴う多数のオブジェクトの変化が他のユーザに認識されるときの認知メカニズムを明らかにすることを目指した。リアルタイムなWeb協調作業システムにおける同期時のユーザの挙動を調べるために、Web上でのプレゼンテーションシステムへの適用を試みた。本プレゼンテーションシステムでは、プレゼンテーション中にアドホックにコンテンツが追加されることを想定しており、追加されたコンテンツがリアルタイムに複数人に同期される。ここでは、複数のオブジェクトが同時に更新される場合の、同期の遅延が問題となったため、これに対応する新たな同期方式を開発した。具体的には、複数の同期対象のオブジェクトの変化を、逐次的に処理するのでは無く、バッチ的に処理するアルゴリズムを開発した。成果を研究会において発表し、好評価を得た。次に、オブジェクトの変化(特に位置の移動)に対するユーザの反応を調べた。予備的な研究として、PCにおけるデスクトップ画面上のウィンドウに関して、ウィンドウの位置を自動的に配置するというタスクにおけるユーザの挙動を調べた。ここでは、アクティブなウインドウにおける作業が、非アクティブなウィンドウの内容に依存する場合を想定し、非アクティブなウィンドウを自動的に移動したときのユーザの挙動を調べた。関連する業績として、国際会議に1編を投稿し、高い評価を得た。ウィンドウの移動に関連して、視線情報の利用を試みた。具体的には、重なり合うオブジェクトに対するフォーカスの移動に対する、視線情報の利用可能性を調べた。ここでは、限定的ではあるがその有用性が示唆された。関連する成果を研究会にて発表し、高評価を得た。総合すると関連する業績として、論文誌5編、および国際会議4編で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Web上での同期アルゴリズムの改良が進み、またオブジェクトの自動的な移動における認知負荷に関する理解が深まり、今後の研究へのステップとなった。関連学会での発表においても、一般投票で上位になるなど、良い反応が得られている。以上により、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
【研究項目1】同期アルゴリズムを改善するために、視線以外のデータを統合的に利用する。具体的には、モーションセンサを利用してユーザの挙動(特にプレゼンテーション)を詳細に分析する。多様なWeb協調作業に対して必要な視覚効果およびその提示タイミングを計算するためのモデルを洗練化する。非対称性を考慮した場合、何をどのように表現して同期すれば良いのかを追求する。例えば、ユーザのスキルの違いや端末の画面のサイズの違いよる同期に対する認知への影響を調べる必要がある。 【研究項目2】Web協調作業における同期において、単なるリアルタイムな編集の再現に基づく同期を超える、新たな同期アルゴリズムの実現を目指す。多様な実行環境における同期手法の最適化のためのモデルを明らかにし、そのモデルに基づく最適化アルゴリズムを設計する。描画内容と実行環境を考慮して適応的に最適な同期手順を導出するためには、実行環境に適した同期情報の表現形式を決定するためのパラメータをオンラインで高速に最適化するためのアルゴリズムを実現する。同期に要する時間をT = TS + TN + TPとする。ここで、それぞれ、TS: 同期元でのオブジェクトの変更に関する情報収集に要する時間、TN: 通信時間、および TP: 同期先のオブジェクトへの変更の反映に要する時間である。ここで、TS + TP、TN、およびWeb協調作業の効率との関係を探る必要がある。さらに、開発したアルゴリズムのライブラリ化、および同期用サーバを実装し、本手法の既存アプリケーションへの組み込みを可能にする。非対称性を考慮すると、TSおよびTPの処理を、可能な限りサーバ上で実行することが有効であると予想されるため、実装面での工夫が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた視線情報取得装置一式を予算内で購入することが困難であったため。今年度は、代替として安価な娯楽用の視線情報取得装置を導入し、その有効性を確認したが、ライセンス上の問題(データ収集には利用不可)が判明したため、研究向けの視線情報取得装置を導入する必要がある。製品のグレードを落とすことで、予算内に収めることは可能であったが、研究への支障を考慮して延期とした。
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次年度使用額の使用計画 |
視線情報取得装置のメーカーと協議したところ、当初計画よりも高性能な機材を予算内で購入できる目処が立ったため、H29年度に導入する。
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