研究課題/領域番号 |
16K00429
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
澤本 潤 岩手県立大学, その他部局等, 特任研究員 (50438082)
|
研究分担者 |
矢島 敬士 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (10385487)
谷口 洋司 第一工業大学, 工学部, 教授 (40746393)
黒沢 学 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (50328514)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 健康情報データベース / 高齢者QOL / 医療・福祉サービス / 異種情報マイニング / 安全・安心 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、共同研究を進めている在宅医療専門医療機関および訪問介護専門ケアセンターの協力を得ながら、高齢者QOL評価指標研究チーム、健康情報データベース構築研究チーム、異種情報ハイブリッド・マイニング手法の研究チームの構成で研究を進めた。まず計画をチーム全員で確認し体制を確立した後、共同研究機関からのデータ提供、ノウハウ提供を受けながら技術課題の抽出・整理、ICTを活用した解決方法の検討を行った。なお,方式設計においては実験的な部分プロトタイピングにより、その設計を進めた。具体的な実施内容概要は以下の通りである。 (1) 高齢者QOL評価指標研究:高齢者における生活の質について実験心理学や認知科学的な観点から実態を調査し、時代的な変化や今後の来るべき高齢社会における健康関連QOLおよび主観的QOLについて整理し指標化を試みた。 (2) 健康情報データベース構築研究:各職種間で共有される医療・福祉情報において各職種が必要とする情報やその優先順位に着目して蓄積・利用に関する検討を行った。また、医療・介護に係わる個人情報について機微な情報を閲覧者側の職種に応じてアクセス管理・制御する仕組みについて研究を進めた。 (3) 異種情報ハイブリッド・マイニング手法の研究:データマイニング応用として異種情報を取り扱う方法を検討した。本年度は,うつ病を早期発見するために,うつ病と深い関わりがあるといわれている「気分」を定量化し測定する尺度や生体データを収集することにより実験を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、全体計画に沿ってほぼ計画通りに研究開発を進めることができた。その具体的な達成度は以下の通りである。 (1) 高齢者QOL評価指標研究:主観的QOLについては、QoLに含まれる因子を予備調査した。3因子構造(現状、過去、置かれた状況)により10項目くらいを調査用紙により調査し、「気分」を推定する方式を考案した。短いスパン(一日単位程度)で変わるものも考慮し、ムード、気分も含めて短期的な変動の測定も可能にした。健康関連QOLについては、認知症患者のQOL測定について検討した。高齢者の主観測定が難しいなどの課題がある。尺度化の例として、認知症ADRQL等の調査を行った。 (2) 健康情報データベース構築研究:現場等へのヒアリングの実施を行い、各職種が必要とする情報やその優先順位について調査を行った。扱う情報が多岐に渡る医療側職種ではCOI(Conditions of Interest)システムによる情報プッシュが有効とのことであった。COIシステムの導入によって、各職種に通知される情報がどの程度削減され効率化されるか検証実験を行い、提案システムが情報過多に有効であることが示された。個人情報の保護に関して、カルテメモ(フリーテキスト)を対象に、病名や過去の通院履歴などの機微な情報が含まれていることが多いことを踏まえ、このような機微な情報を閲覧者側の職種に応じて,適切な表現に自動的に変換する手法について研究を行った。 (3) 異種情報ハイブリッド・マイニング手法の研究:うつ病を早期発見するために、うつ病と深い関わりがあるといわれている「気分」を定量化し測定する尺度と生体データを収集することができるウェアラブルセンサを用いて長期的にデータを収集し、アソシエーション分析を行うことにより、うつ病の段階に応じた気分と生体データに関する規則性、法則の発見を行う研究を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた結果を基にして、平成29年度は以下の課題に取組む。平成29年度は、プロトタイプ制作・評価を中心に行い、実環境での適用に目途をつける。 (1) 高齢者QOL評価指標研究として、本研究で利用する評価指標の定義をまとめて各チームで共有する。 (2) 健康情報データベース構築研究として、健康情報データベースのプロトタイプ作成・評価を実施する。 (3) 異種情報ハイブリッド・マイニング手法の研究として、異種情報データマイニング実行モデルによるプロトタイプ作成・評価を実施する。 (4) 応用事例による有効性評価として、医療機関や介護センターである共同研究機関と共同しながら実環境への適用について検討を進め、応用システム構築の準備を行う。 平成30年度は、実用に近い応用システムの構築および共同研究機関をフィールドとした実証実験を実施することにより被験者の満足度なども含めた総合的な評価を行う。健康情報データベースを対象とした異種情報データマイニング環境を構築し、この環境下で実用に近い応用システムの構築および共同研究機関をフィールドとした実証実験を実施することにより被験者の満足度なども含めた総合的な評価を行う。さらに、得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究全体は概ね順調に進んでいるが、異種情報ハイブリッド・マイニング手法に関するマイニングソフトウェアの購入選定に時間が掛かり購入まで至らなかったこと、および高齢者の住居に設置した振動センサを用いた各種ライフログ情報取得研究に関する研究成果が予定した国際学会発表まで至らなかったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
マイニングソフトウェアの購入を実施し、異種情報ハイブリッド・マイニングの研究を加速する。振動センサを用いた各種ライフログ情報取得研究に関しては国際会議投稿中であり、次年度海外発表を行う。
|