本研究計画では、金沢市の周辺都市として野々市市を取り上げ、野々市市と金沢市の通勤・通学の交通量削減に向け研究を実施する。中核都市とその周辺の住宅街という環境条件を元に、パークアンドライドのための交通流シミュレーション環境の整備、現状の交通状況の再現を行い、道路ネットワークと渋滞の関係を明らかにし、モデル化とその妥当性を確認する。 2016年度は交通流のマルチエージェント型のミクロシミュレーション環境の整備、実測定データの調査、道路交通センサスデータを元とした車両移動データの推定を実施した。しかし、道路交通センサスデータの調査は5年に1日であり、交通量の推定を行うためには不十分である。そこで、2017年度は携帯電話の保有数を元に計測されたデータと道路交通センサスデータを元に、任意の日時の交通量を推定する方式を研究した。±20%の誤差を許容すると仮定した場合、75%の領域で適用可能な回帰式を導出することができた。 2018年度は2017年度に導出した回帰式の正当性を評価するために、他の中核都市として富山市に対し同様の方法で評価を行った。富山市においては、74%の領域で適用可能であることがわかった。すべての中核都市での評価ではないが、非常に類似した結果を得ることができ、本方式の有効性を確認することが出来た。更に、精度向上を目指して標本集団の母集団の性質を推定するためにブートストラップ法を用いて代表値の決定方式の評価を行ったが、残念ながら精度向上までは結びつかなかった。また、交通センサスデータから移動データへの変換については、変換アルゴリズムの実装が完了し、ミクロ交通流シミュレータにて動作させることができるようになった。シミュレーションにおける誤差については、縮小するアルゴリズム開発の途上である。
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