研究課題/領域番号 |
16K00437
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研究機関 | 弓削商船高等専門学校 |
研究代表者 |
長尾 和彦 弓削商船高等専門学校, 情報工学科, 教授 (90217969)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スマートフォン / プレジャーボート / AIS / GPS / 電波強度 / 個人情報保護 |
研究実績の概要 |
日本は周囲を海に囲まれた海洋国家であり、船舶は重要な輸送手段として活用されている。平成25年度海上保安庁の調査結果では日本国内に大型船舶は5400隻、小型船舶は100倍の50万隻と、非常に多くの船舶が国内に存在する。日本で発生する船舶事故のうち、約7割が漁船・プレジャーボートといった小型船舶による事故となっている。AIS(automatic identification system)は船舶の船名、船種、位置、進路などをVHF波で送受信し、船舶間、陸上間で情報交換を行うシステムであり、大型船舶には設置が義務付けられ、事故減少に寄与している。小型船舶には搭載義務がなく、高価であることから普及が進んでいない。本研究では、レーダやAISの機能を安価なスマートフォンで実現することを目的としている。本システムが実現されることにより、漁船やプレジャーボートなど多くの船舶の安全航行を実現することができる。 平成29年度は、瀬戸内海における電波受信状態を測定し、電波が届かない海域について通信事業者による違いの調査を行なった。また、既存のAISとの連携を実現するために、簡易AIS受信機を開発し、港湾施設等での実証実験を行った。国土交通省のスマートフォンを活用した船舶事故防止調査(日本無線受託)に参加し、東京湾付近での実証実験に機器を提供した。AISシステムは個人情報を扱うため、情報管理について配慮が求められる。実際の事故防止を前提として運行時の情報定時の指針についても提案を行った。 これらの成果報告として、学会発表5件、研究論文投稿1件を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、開発したシステムの運用によるデータ収集、既存システム統合のためのシステム開発と検証を行った。 (1)瀬戸内海地域における電波状態の調査:開発したシステムはサーバとの通信のため、通信可能であることが求められる。昨年度に続き瀬戸内海地域における電波状態を通信事業者3社に対して実施した。船舶が多く航行するエリアでは概ね受信可能であることを確認した。また、電波状態モニタプログラムを公開し、一般からのデータ取得に対応した。 (2)個人情報の取扱に関する検討:AISでは船舶情報などの個人情報を取得するため、情報開示の可否についての指針が必要である。事故防止の観点から、船舶の状態(船舶間距離)・開示許可の有無などにより分類し、ガイドラインを提案した。 (3)簡易AIS受信機の開発:統合的な航海支援のため、既存AISが保持する大型船舶等のデータと連携が必要となる。そのためAIS受信機を全国に配置し、データを収集するために、AISネットワークを構築しなければならない。本年度は、簡易AIS受信機を開発し、港湾施設において実証実験を行い十分な機能を有することを確認した。また、データの重複やサーバ負荷分散についての検証をおこなった。国土交通省のネットワーク構築に反映される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は昨年度に続いて運用フェーズと設定し、監視用サーバの開発と試験運用を実施する。 (1)AISネットワークのシミュレーション:簡易AIS受信機を瀬戸内海地域に複数設置し、データの継続的な収集を行う。また、サーバ負荷軽減のための分散方法についての検討を行う。 (2)LPWAを用いたAIS代替システムの検討:現在のシステムはデータ取得のため、スマートフォンの通信が可能であることが求められる。LPWAは低速度でありながら遠距離との通信が可能である。海上でのLPWA通信に関する基礎実験を通して、AIS代替システムの検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった物品が納期延期になったため
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