本研究では、論文間参照ネットワークを利用した文献探索に焦点を当て、論文間参照理由を参照ネットワークに付与することにより、起点論文の関連文献を効率よく探索する手法を開発し、その効果を実験により検証することを目的としている。平成28年度は従来型の機械学習による論文間参照理由の自動判定手法を開発し、平成29年度はその判定精度の向上を目指し、深層学習を導入した。そして最終年度の平成30年度は、平成29年度に続き論文間参照ネットワークの構築と文献探索者の探索目的を参照理由に置き換える仕組みの開発を行った上で、論文間参照理由にもとづく文献探索システムを構築した。ここで、探索範囲内において起点論文の関連文献を探索者自身が選定するが、探索者の負担を軽減し作業を円滑に行ってもらえるように、パスの強調表示やノード(論文)の情報表示など、様々な補助機能も併せて開発した。このように関連性の低い文献や探索目的にそぐわない文献の一部が切り捨てられるため、文献探索の効率向上を図った。実際の利用者から得られたフィードバックをもとに、システムの改良を重ねた結果、本手法の有効性が評価実験により示された。最終年度は各要素技術の改善と文献探索システムの性能向上を目指し、内外の研究機関にて研究情報を収集しながら、様々な研究者と有益な議論を行った。また、本研究の最終成果を内外の学会で発表しながら、学術雑誌に投稿し社会に向けての情報発信を精力的に行った。
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