複雑な反射特性を持つ様々な材質情報を記録できる画像計測に基づいたデジタルアーカイブ技術を開発した.材質情報は,特殊な計測機器が無くても通常のカメラで撮影した画像データから推定可能である.この方法は,対象材質の光反射プロセスを光反射モデルと呼ばれる数学モデルで記述し,材質情報は,光反射モデルのモデルパラメータとして定量化した上で画像データから推定する.そして,推定した材質情報に基づいて対象をCG再現する手法も開発した. (1) 任意の場所で材質情報を画像計測できるように光反射モデルを開発し照明環境(光源の空間分布と分光分布)の情報を組み込んだシーン全体の光反射プロセスを記述した光反射モデルを開発した. (2) 【複雑な反射特性を持つ材質を対象に提案手法を検証】本研究では主に,重要文化財である小諸城の建材を対象に提案手法の精度を検証した.提案手法を用いて画像計測のみで小諸城の現存する建造物に対して外観・屋内の材質情報の推定を行った.小諸市と研究協力者の協力を得て推定した材質情報と小諸市に残された古文書等の情報とを比較して提案手法の精度を検証した.小諸城が提案手法の検証に適している理由は,改修・復元時に古い材料を再利用し,現存する建造物の材料の多くが江戸期以前のものを使用しているからである.また,古い健在なので文化財の劣化状態の計測にも適していた.この結果,劣化状態も含めて材質情報の推定が可能となった.本研究の応用として有形文化財以外の材質にも適用を試みた.人の肌は複雑な反射特性を持つことが知られている.本研究で開発した手法を人の肌にも応用したところその有効性が確認できた. (3) 【研究成果の発表】画像計測に基づいた有形文化財の材質推定に関する学術論文を現在投稿中である.また,提案手法を人の肌の材質推定に応用した研究成果をまとめた論文は Design Research に採録された.
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