研究課題
本年度は3年間の科学研究費補助金での研究の初年度であり,以下の基礎研究を行った。(1)書評中にみられる感情表現と読後感の分析:書評中にみられる形容詞および名詞と読後感との関係を調べたところ,形容詞については読後感と一致するものが多いものの,表現は多様であり,また書評中には表現されない読後感も多いことが明らかとなった。また,名詞についてはさらに多様な表現が使われることが多く,そのままで機械化の基礎データとして使用するのは難しいことがわかった。さらに,書評中では相反する感情を示す形容詞などが同時に使われることも多く,どれが内容と関わるのか等についてのより詳細な分析が必要である。(2)図書館における同時貸し出しとAmazonの推薦の違いの分析:図書館で同時に多数の図書を貸し出す場合には関連する図書が借りられることが多い。それを利用して図書の推薦を行う場合とAmazonの推薦を比較したところ,図書館とAmazonとは本の選択基準が異なり,図書館の方がAmazonよりも広い範囲の図書を借りていく傾向が多いことが明らかとなった。ただし,このことは全く関係ない図書の利用も多いことを示している。(3)Wikipediaや図書のタイトルなどを元にした検索語の拡張:検索語として入力された言葉だけでは情報要求に十分に応えられないことを想定し,Wikipediaや図書のタイトルなどで検索語と共出現回数の多い語をORで接続した検索を行って評価した。その結果,Wikipediaを元にした語については情報要求とは異なるもものがほとんどであったのに対して,図書のタイトル中で共出現したものについては関連するものも多く,検索語拡張の候補とできる可能生があることが明らかとなった。ただし,図書のタイトル中の語についてもノイズは極めて多く,実際のシステムへの応用については課題が多いことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画では平成28年度中にシステム構築の基礎となる調査分析を実施し、平成29年度より実際のシステム開発に着手することとしていた。平成28年度の研究ではこの基礎的部分について作業を進めており、課題も多いもののシステムに応用可能な知見を得られている。
前述のとおり、平成28年度に得た基礎的知見を反映し、平成29年度以降はシステム開発と検証にも着手していく予定である。実績部分にも記述したとおり、幾つかの知見についてはそのままシステム開発に反映するには追加の検証を要するが、当初計画でも平成29年度は基礎的調査部分とシステム開発部分を並行して進める予定であり、問題なく進行できるものと考えている。
当初、初年度に購入を検討していた日外アソシエーツBOOKデータベースの購入を初年度は見送ったため未使用額が生じた。
次年度以降に購入を検討している。
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情報知識学会誌
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Musa:博物館学芸員課程年報(追手門学院大学)
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10.1002/pra2.2016.14505301100