本研究では、エンベディッド・ライブラリアンと呼ばれる図書館サービスの提供対象である、米国アリゾナ大学薬学部の教員、研究者、学生の情報利用行動について調査した。アリゾナ大学ヘルスサイエンス図書館におけるエンベディッド・ライブラリアンサービスでは、情報サービスを提供する図書館司書が、図書館ではなくサービス提供の対象である学部に配置されている。本研究では、そのサービスがどのように有効であるか、またどのような局面でより効果的なサービスが提供できるのかを理解するために、薬学部構成員が教育、学習、研究においてどのように情報を探索し、利用しているかを半構造化インタビューによって調査した。 結果、利用者が情報を探索する目的で図書館を訪問することなく、オンラインでデータベースを検索していることが改めて確認でき、図書館司書が図書館内で情報サービスを提供する方法の限界が明らかとなった。また、利用者の多くが、情報を検索する際にはそれほど困難を感じていない傾向があり、自発的に図書館司書に情報探索の支援を求めることが少なくなっていることにつながっている。このことからも、利用者が支援を求めるのを待つのではなく、利用者のいる場所で能動的にサービスを提供するエンベディッド・ライブラリアンがより有効であるといえる。さらに、利用者は図書館ではなく、周囲の人間に情報探索の支援を求め、図書館司書に支援を求めることが少ないことからも、エンベディッド・ライブラリアンにおいて図書館員がより利用者に近い存在となる必要があるという課題が確認された。 平成30年度では、インタビューの文字化、分析を引き続き行った。アリゾナ大学の研究協力者を日本に招聘し、共同で上記の内容及びアリゾナ大学ヘルスサイエンス図書館におけるエンベディッド・ライブラリアンサービスについて報告発表を行い、最終成果発表のためのデータ分析、論文執筆を進めた。
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