研究課題/領域番号 |
16K00453
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研究機関 | 大和大学 |
研究代表者 |
藤澤 和子 大和大学, 保健医療学部, 教授 (30739420)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 知的障害者 / 公共図書館 / 合理的配慮 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、公共図書館において知的障害者の図書館利用や読書支援を進めるための合理的配慮のあり方について、公共図書館で実証的に検証し、具体的内容と方法を明らかにすることである。本研究の2年目にあたる平成29年度は、スウェーデンの公共図書館等で取り組まれている知的障害者への読書支援サービスについての先行事例を収集した。さらに、28年度に調査した図書館利用についての当事者のニーズ調査をもとに検討した合理的配慮の事項を協力図書館4館において検証を進めながら実践した。 ①図書館利用のためのわかりやすい配慮については、知的障害のある利用者が声が出たり落ち着けないときや代読に利用できる個室の設置、ピクトグラムによる配架表示、わかりやすい利用案内の制作、図書館に来館する知的障害者に対する一般利用者の理解を促すためのポスター制作を行っている。②わかりやすい図書や視聴覚メディア資料については、LLブック等を収集したわかりやすい図書コーナーを設置して、利用状況の調査等を実施した。コーナーの設置によりLLブック等の貸し出し件数の増加が示され、コーナーの効果が明らかになった。③職員によるわかりやすい対応やサービスについては、読書サポート講座を実施して参加者へのアンケート調査を行った。講座は、図書館、福祉施設や事業所、学校、一般市民を対象に、知的障害者の読書支援のための基礎的知識と代読や読み聞かせの技能を学ぶ内容で、大阪と奈良の3館、東京1館で開催し、1館につき6講座を設けた。講座を受講して知的障害者への読書支援についての関心が深まったという参加者の回答が99%に及び、講座の必要性が明らかになった。知的障害者に図書館見学と読み聞かせ等のサービスを行う図書館体験ツアーを実施し、当事者から好評を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は、28年度に実施した知的障害者の図書館へのニーズ調査結果と、29年度前半に収集したスウェーデンの公共図書館の先行事例をもとに検討した合理的配慮の事項について、協力図書館4館において検証を進めながら実施した。実施の効果について客観的な評価ができるように必要な調査を行い、取り組みの有効性を検証した。事項は複数に及ぶため、30年度前半にわたって継続して実施する計画で進行している。
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今後の研究の推進方策 |
30年度の前半は、知的障害者に必要な合理的配慮の事項について29年度から継続して実践してまとめる。後半は『公共図書館における知的障害者への合理的配慮提供のための実践マニュアル』として研究全体の成果と課題を報告書にまとめ、公開シンポジウムやウェブサイトなどを合わせて広く発信し、社会に還元する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度に予定していた合理的配慮の実践やサポート講座まとめ等の会議、知的障害者の図書館利用の理解を促すためのポスター制作が30年度にもわたったため、次年度使用が生じた。最終年度の30年度は、協力図書館で実施している合理的配慮の事項のまとめと、全体の報告書を作るための会議、複数の学会発表、公表のための公開シンポジウムを予定しており、そのための研究連携者や協力者等の旅費と謝金、学会発表にかかる費用に使用する。また、報告書と知的障害者の図書館利用への理解をうながすためのポスターの制作費と配布費等に使用する。
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