研究課題/領域番号 |
16K00457
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩澤 まり子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 名誉教授 (20292568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 症状表現 / アウトカム / 患者家族支援 / 医療情報 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、重い障害を残すことがあり、初期症状の把握が治療の効果に重要であると考えられる子どもの「インフルエンザ脳症」を研究対象として調査を実施した。医学論文データベースを検索して、学術雑誌に掲載されている症例報告を収集した。症例報告の本文から「インフルエンザ脳症」の診断前に認められている症状表現を抽出した。さらに、子どもの「インフルエンザ脳症」の治療について家族が執筆した闘病記を使用し、家族が自宅で子どもの症状を観察している「インフルエンザ脳症」の診断前の期間に着目して、症状表現を本文から抽出した。また、インフルエンザ脳症ガイドライン(以下、ガイドライン)から、診断基準として書かれている症状表現を抽出した。 症例報告、闘病記、ガイドラインから抽出できた症状表現は、発熱、けいれん、意識障害、異常言動・行動、その他の5つのにわけることができた。症例報告は専門用語により表現されていたが、闘病記は日常生活に基づく症状表現が使用されていた。ガイドラインの「意識レベルの判定に使用される症状」「異常行動と言動についての具体例」には、保護者にも理解できる症状表現が使用されていた。家族が症例報告を利用するためには、専門用語と日常生活用語との対応関係を提供する必要があることが明らかになった。 平成29年度には、症状表現とともにアウトカム表現の抽出、症例報告の著者抄録および著者キーワードの調査、一般向けおよび医療者向けの医学書の巻末索引を利用した症状表現およびアウトカム表現の抽出を計画していた。しかし、抽出できる症状表現およびアウトカム表現は少なく、表現を増やすことはできなかった。 症状表現とともにアウトカム表現を収集するためには、医療従事者が執筆する症例報告に加えて、一般向けの医学書および闘病記の使用が必要である。今後、調査資料を増やして、表現を収集し、対応分析をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、症例報告の抄録および著者キーワードからの症状表現の抽出を計画していた。さらに、一般向けおよび医療者向けの医学書の巻末索引を利用した症状表現およびアウトカム表現の抽出も計画していた。しかし、いずれの方法も、症状表現とアウトカム表現の抽出には適していなかった。調査対象とする医学書の確認に時間を要し、代替方法の検討にはいたらなかった。 また、闘病記が有用な情報源となると考えられるが、闘病記の検索と内容確認が困難であり、利用する闘病記の選択に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
インフルエンザ脳症を研究対象として、症例報告、闘病記、診療ガイドラインから抽出した症状表現をまとめ、情報として提供できるように整理する。さらに、アウトカム表現の抽出を再度試み、患者家族による表現のみであっても、情報提供する可能性を検討する。 複数の闘病記が入手できる疾病を探し、その疾病についての症状表現とアウトカム表現を症例報告、闘病記、診療ガイドラインから抽出する。新たな表現の収集方法として、看護用語の利用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
症状表現とアウトカム表現の抽出のために使用する医療者向けおよび一般向けの医学書の購入、闘病記の検索と購入などの使用ができなかった。また、研究成果の公開のためのサイトの開設ができなかったため、専門知識の提供に対する謝金の使用もできなかった。次年度には、闘病記および看護関連の図書の購入、サイト開設のための専門知識の提供に対する謝金として、使用する計画である。
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