本研究の目的は、パターン認識と制約解消とを組み合わせて従来の手法では成し得なかった古文書の手書き変体仮名の文字認識を行い、手書き変体仮名で記述された古文書の翻刻を可能とすることである。本研究が目指すシステムは複数の文字認識結果の中から制約解消機能を用いて全体的に妥当な文字認識結果を選び出す。これを実現するためにシステムは主に二つの構成要素からなる。それは(1)画像中の変体仮名を切り出しその仮名の読みの候補を出力する画像認識器と(2)全体的に妥当な読みの組み合わせを求める制約解消器との2つである。
最終年度はシステムのグラフカルユーザインタフェースの改善に取り組んだ。文字の切り出し結果と文字認識結果の表示の仕方は、それらの編集のしやすさにつながる。そこで、古文書画像からの文字の切り出し結果をグラフとして表示する方法を考案し、従来からのグラフ描画法と比較検討した。また、古文書画像中の文字認識への第一歩として、深層学習を応用した古文書画像からの行切り出し法について予備実験までを行った。
研究期間全体の成果は次の通りである。先行研究として我々は複数の文字認識結果の中から全体的に妥当な文字認識結果を選び出す制約解消器を実装していた。本研究期間内に、その制約解消器を高速化し、さらに翻刻支援のためのグラフィカルユーザインタフェースを実現した。グラフィカルユーザインターフェースによって、文字の切り出し結果と文字の認識結果とから制約充足問題を自動生成できるようになっただけでなく、制約解消器の出力する解(翻刻結果の候補)も見やすくなった。
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