研究課題/領域番号 |
16K00466
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小林 隆 東海大学, 政治経済学部, 教授 (70384881)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マイナンバーカード / AI / ビッグデータ / オントロジー / ガバナンス |
研究実績の概要 |
平成29年度も前年度に引き続き、研究計画に基づき、地域を超える社会関係資本の状況を把握し、クラスターに参加する個人のプロファイルから、活動目的などの背景や活動パターンが把握可能であること、またAIを利用したビッグデータ解析において概念モデルを利用した表現が可能であることについて研究を進めた。その結果、得られた主な成果は次のとおりである。 (a)中国政府は、日本のマイナンバーカードに相当する身分証明書を電子IDとし、スマートフォンにおいて実現した。そこでのAIの活用は、政府の有する個人情報と複数企業の有する個人情報を合わせて活用することで、個人活動のパターン認識から本人確認を行っている現状を確認した。 (b)上記の成果を踏まえ、AI活用政策は、官民一体となったビッグデータ解析の結果に基づいて必要となる政策を示し、執行段階においては、申請しないもののみ意思表示する①積極的な選択のデフォルトの設定、②官民一体となった政策の決定と実行、③解析結果に対する民主的な政策の補正よるガバナンスが必要であることを指摘した。 (c)ガバナンスに貢献するAI活用の必要性を確認したことから、その活用にあたって必要となるAI導入のための概念の体系を社会科学と情報科学のオントロジー(Ontology:存在論)に関わる理論的、体系的整理を試みた。 (d)社会科学と情報科学の理論的整理からは,ガバナンスが社会科学の基本的視点である多様な主体を含む総合的アプローチを必要とすること,そのためには膨大なデータを包括的に扱うことを可能にするAIをガバナンスに活用することは避けることができないことを明らかにし,情報科学で議論されてきたオントロジー概念と社会科学のオントロジー概念の共有のための体系を明示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)文献研究ならびに事例研究から、概念モデルを用いて、ビッグデータ解析の際に用いる理論的概念枠組みを明確にする。(2)地域を超えた社会関係資本の状況を把握するために、個人のプロファイル等の情報から組織(クラスター)の階層や、その活動目的等を把握可能とする。(3)社会システムの安定状態を把握する方法を明らかにする。以上により、ビッグデータ解析に向けた地域を超える都市・農村政策のための概念を構築することが目的である。 現在までの進捗状況として、(1)に関連して、研究実績の概要(c)(d)の成果により、現実の社会活動分析に対応するために,複数の基本モデルからなる概念モデルにより,社会活動の状態変化を想定し,それに対して過去に行われてきたガバナンス論における分析と,社会科学と情報科学のオントロジーの概念の体系化とその構成要素の対応関係を整理した。その結果,この体系において,社会活動の状態の変化に対して,いずれの側面からもガバナンスのための社会活動の状態分析の可能性を示すことができた。(2)に関連して、(a)(b)の成果から、ガバナンスにおける民主的な政策補正の必要が明らかになった。(3)に関連しては、(b)(c)(d)成果から、人口減少期は,過去に比して,中央や地方政府,企業や団体の崩壊や再編が想定され、スケールフリー性によるクラスターの崩壊後を含むガバナンスの方法を提示することが課題として把握された。 以上より、本研究は、その目的に沿って、おおむね順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、平成30年度は、都市と農村、都市と都市、農村と農村など、地域を超えた社会活動のバランスを踏まえた社会システムの安定状態を概念モデルにより把握するガバナンスの方法を検討する。さらに、都市・農村の新たな社会関係資本の構築支援と、その構築により代替される機能やクラスターの崩壊などにより縮減すべき機能を把握することで総合的政策としてのガバナンスのあり方ついて検討する。 具体的には、人口減少などを背景とした計画モデル(行政活動)の縮減の必要を踏まえ、貢献・福祉モデル(まちづくり活動・福祉活動)、または市場モデル(企業活動)による代替の状況を把握する。さらに、地域を超えた都市・農村の安定状態の判断方法を提示し、その政策展開の方法をマスタープランならびにガバナンス論を踏まえて検討する。 社会の持続可能性を確保するためには、社会活動の多様性を踏まえた総合的なガバナンス政策を展開することが求められる。最終年度は、ビッグデータに対して概念モデルを適用した①社会活動全体の関係性の把握、②個人情報による地域を超えた社会関係資本の形成状況の把握、③不要な都市・農村機能の特定と縮減が可能な政策概念構築を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所要額130万円に対して21,445円とわずかな差が生じたが、全体としては誤差の範囲である。資料整理などの人件費が予定よりも負担が軽かったことが残額が生じた理由であるが、消耗品、旅費等が予算を上回る支出となった。 次年度使用額は、昨年度も予定より支出が上回った旅費として使用する。
|