研究課題/領域番号 |
16K00466
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小林 隆 東海大学, 政治経済学部, 教授 (70384881)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 概念モデル / 社会システム / 人工知能(AI) / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
平成30年度は、地域を超えた社会システムの安定状態を概念モデルにより把握する方法を検討するとともに、都市・農村の新たな社会関係資本の構築支援と、その構築により代替される機能やクラスターの崩壊などにより縮減すべき機能を把握することで総合的都市・農村政策の概念のあり方を検討した。とりわけ拡大するビッグデータならびにAIの役割と意義を中心に考察した。その結果、得られた主な成果は次のとおりである。 (a)米国や中国は、インターネットやAIなどの情報技術が、既存の社会的機能の代替をもたらし、計画モデル(行政活動)から市場モデル(企業活動)へと社会的機能がとって代わろうとする際に、官民が一体となって企業の革新的技術の開発研究を支援し、躊躇なく機能代替を受け入れる。しかし、日本の場合、これらを即座に受け入れることに躊躇する傾向がある。 (b)このことは、これまでの計画モデル(行政活動)の概念が、人間の存在を頂点として、関係や構造を因果関係から規定し、個別の目的、役割、機能へと向かうという、概念上の上から下へと展開する慣習によるものと考える。情報自治におけるAI導入の意義は、AIの活用は財と人が不足する地域社会において必要不可欠であり、財と人に依存してきた「機能」をAIに代替する試みととらえることができる。これに加えて、概念モデルを応用することで機能代替を確認することに意義がある。 (c)計画モデルが、市場モデルや貢献モデルにおいて機能代替可能な場合、企業や住民と連携しつつ、全国に安価に展開できるよう企業の研究開発を支援し、その普及に努めること、また、国は、すでに国内で広がる海外AIやビッグデータの活用において、公平性、透明性と説明責任を、海外企業も含めて国民の個人情報の取扱いのルールを明確にし、国境を越えたデータ利用での国民の個人情報の流出防止策を早急に提示することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年4月より、研究代表者が大学運営に携わることになり、大学運営業務のエフォートが増大したため当初計画の遅延が発生した。また研究協力者がモンゴル国立大学に採用されたことなどにより、平成30年度の研究計画の進捗率は50%程度となった。2019年度内には計画どおり完了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、人口減少などを背景とした計画モデル(行政活動)の縮減の必要を踏まえ、貢献・福祉モデル(まちづくり活動・福祉活動)、または市場モデル(企業活動)による機能代替の状況を把握し、概念モデルを用いたAIならびにビッグデータ活用の状況から地域空間を超える社会関係資本の可能性を示す。これにより、従来から進めてきたマスタープランの電子メディア化研究の集大成として、ビッグデータに対して概念モデルを適用した(1)社会活動全体の関係性の把握、(2)個人情報による地域を超えた社会関係資本の形成状況の把握、(3)不要な都市・農村機能の特定と縮減が可能なマスタープラン理論の体系化による政策概念の再構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の後半は、研究協力者が、海外大学にポジションを得たことから、当初予定していた人件費が支出されなくなったことが主因である。現在、研究協力者とは、スカイプなどを利用したテレビ会議を通じて研究作業を進めている。2019年度は、論文発表のためのデータ作成補助などの業務を担当するスタッフを雇用して、2018年度に公表できなかった学術論文等の成果をまとめ、本研究計画を完了する予定である。
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