研究課題/領域番号 |
16K00473
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
三野 行徳 国文学研究資料館, 研究部, プロジェクト研究員 (30714224)
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研究分担者 |
久留島 浩 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 館長 (30161772)
伊達 元成 伊達市噴火湾文化研究所, 生涯学習課(文化財係), 研究員(移行) (70620897)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 明治維新 / 北海道移住 / 武家 / 士族 / アイヌ / 場所請負制度 / アーカイブズ |
研究実績の概要 |
本年度の課題は、亘理伊達家および仙台藩旧臣に関する史料調査および、目録やデータベース作成のための基礎作りである。活動はおもに①史料の実地調査②史料整理とデータ化③研究報告会の3点となる。 ①史料調査は、当初の計画どおり、7月に札幌市(北海道立文書館)、小樽市(小樽市総合博物館)、亘理町(亘理町立郷土資料館)、盛岡市(もりおか歴史文化館)、9月に北海道伊達市(伊達神社・伊達市噴火湾文化研究所)にて調査を行った。以上の調査では、明治初年に北海道の分領支配を行った26の領主についての史料(小樽市・札幌市)の発掘を行った。また、亘理伊達家については、明治維新以前の亘理時代や、移住後に亘理に残された人々の関連史料、亘理伊達家移住以前の有珠郡に関する史料を多く発見することができた。 ②亘理伊達家家老田村家の目録作成を進め、約2000点中1000件の入力を終えた。また、亘理町において整理・編さんが行われている亘理伊達家家臣の史料(二階堂家文書、志賀家文書)について、史料整理や翻刻、分析を行った。この翻刻作業では、北海道伊達市の移住者子孫の市民グループが協力する体制を構築した。①の成果と併せて、宮城県亘理町と北海道伊達市という、亘理伊達家を紐帯として結ばれた二つの地域について、史料調査のみならず、研究成果の公開においてもつながりを作ることができた。 ③8月に国立歴史民俗博物館において研究会を開催し、代表者・分担者・研究協力者7名による、武家の北海道移住に関する研究報告を行った。研究成果として、三野行徳「海を渡った記録と記憶-北海道に伝来した亘理伊達家中のアーカイブズ-」(旅の文化研究所『まほら』第88号)、工藤航平「北海道所在の民間アーカイブズの特質―分割管理された「移住持込文書」の伝来と意義―」(国文学研究資料館編『社会変容と民間アーカイブズ-地域の持続へ向けて-』勉誠出版)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主たる課題は、①亘理伊達家に関する史料調査と、②北海道移住仙台藩旧臣に関する史料調査、③史料調査・研究成果の公開・資源化に向けた準備である。 ①については、移住以前の亘理における関連史料の調査により、移住以前の近世段階の亘理伊達家の検討が可能になるとともに、移住せずに亘理に残った家臣(二階堂家・志賀家など)の史料の検討が可能になった。また、亘理伊達家の北海道移住後に亘理を支配した南部藩の史料からも、明治初年の亘理の様子が明らかとなるとともに、南部藩が幕末に北海道の海防を担当していたことから、近世の有珠郡の様子を知ることが出来た。このように、宮城県亘理町-北海道伊達市に関わる多くの史料の存在が明らかとなり、調査研究を進めることが出来た。 ②については、北海道立文書館所蔵の関連史料の悉皆調査が進み、北海道に移住した仙台藩旧臣の基礎情報をまとめる段階に入ると同時に、小樽市(当別伊達家)、角田市(石川家)に仙台藩旧臣の史料があることが分かり、調査の許諾を得ることが出来た。 ③については、a.亘理伊達家家老田村家文書について目録公開の目途が立ったこと、b.亘理町史において市民協働で亘理伊達家家臣の史料整理の体制を構築し、目録・史料集刊行の目途が立ったことが大きな成果である。 以上①②③の成果から、本年度は概ね順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進にあたっては、以下の3点が主たる課題となる。 ①これまでの収集した亘理伊達家に関するアーカイブズ情報を整理し、亘理町-伊達市に関わる人々および、関心を持つ人々の手に届ける方法を検討する。この点に関して、以下の3点を具体的に遂行する。a.亘理伊達家家老田村家文書について、2017年度中に仮目録を完成させ、科研最終年度に製本頒布を行い、地域社会における資源化を目指す。b.亘理町で編さんが進んでいる亘理伊達家家臣団に関する史料調査・整理に協力し、資源化を目指す。c.北海道伊達市で編さんが開始された『伊達開拓物語(仮)』に協力し、史料発掘や研究の成果を地域社会と共有する方法を検討する。以上の3点は、本科研によって得ることのできた史料情報や研究成果を、地域社会の歴史・文化遺産として研究・活用していくための取り組みである。 ②亘理伊達家および家臣団について、これまで得られた史料調査の成果をもとに、分担者・協力者とともに研究を進め、論文集にまとめる。 ③明治初年に北海道に移住した26の領主に関するアーカイブズ情報を引き続き収集し、今後の研究の基礎を構築する。 本研究は仙台藩旧臣、とくに亘理伊達家に関わる研究であるが、③は、本研究で得られる成果をより普遍的に位置づけるための基礎作業となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、a.2016年12月に予定していた調査が悪天候のため中止となったこと、b.分担者久留島氏の北海道調査が実現しなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は調査が多くなることが見込まれるため、調査旅費として使用する予定である。
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