研究課題/領域番号 |
16K00477
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
川村 尚生 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10263485)
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研究分担者 |
高橋 健一 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30399670)
菅原 一孔 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90149948)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | e-Learning / 分散システム / P2P / モバイルエージェント / 分散ハッシュテーブル / Chord |
研究実績の概要 |
本研究の目標は,複数台のコンピュータに問題データや機能が分担された分散型e-Learningシステムを実現することである.今年度の実績は2つに大別できる. まずひとつは,分散型e-Learningシステムの枠組みを開発したことである.すなわち複数のe-Learningサーバ群に問題データや機能を分散配置し,サーバが自由に参加・離脱できるシステムを設計し,実装した.実装は,我々が開発したモバイルエージェントシステムプラットフォームMaglogを用いて行った.MaglogはJava上で動作するプラットフォームで,Java言語やProlog言語を用いて,エージェントベースのアプリケーションを記述できる.Maglogにモジュールとして,分散ハッシュテーブルChordに基づくOverlay Weaverを組み込み,分散型e-Learningシステムの枠組みを実装した.開発したシステムについて,今年度の予算で購入した4ノードを,これまで保有していた16ノードに追加し,合計20ノードのクラスタマシン上で動作実験し,良好な結果を得ている. もうひとつは,学生が使用するクライアント端末から,上記のe-Learningシステムに接続して学習する枠組みを開発したことである.負荷状況を考慮したラウンドロビンアルゴリズムにより,特定のサーバにクライアントからの接続要求が集中しないようにしている.学習コンテンツは,サーバ・クライアント間をHTMLでやりとりされ,学習者はウェブブラウザを通じて学習するようにした.昨今の状況に鑑み,パーソナルコンピュータに加えて,スマートフォンやタブレットを利用した学習に対応するため,iOSデバイスを購入して実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,分散型e-Learningシステムの枠組みを開発することと,クラスタマシン上での実験を計画していたが,この両方を達成した.枠組みにおいて,速度低下を防ぐためのアルゴリズムを幾つか検討する予定であったが,この点については,クライアントがどのサーバに接続するかをサーバの負荷を考慮して決定すること,同じ学習コンテンツを複数のサーバにコピーしておいて,複数の学習者が同時に同じ学習コンテンツを利用しようとしたときに速度低下を防ぐことを達成できたものの,サーバの台数を,利用状況に応じて自動的に増減する仕組みは次年度以降に持ち越された.逆に,当初予定していなかったクライアント側のユーザインタフェースを,iOSデバイスを含めて開発した.以上を総合すると,概ね予定どおり進捗しているものと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
当初想定していなかった課題が2つ出てきたので,研究計画を変更してこれらに取り組む.ただし,計画していた計算機実習室での多数ノードにおける実験も行う. 当初,分散型e-Learningシステムのサーバ群はほぼ同一性能を持つノードから構成される均一のクラスタマシンを想定していたが,今年度,新規購入して高性能な4台のノードと,保有済みの低性能な16台のノードを組み合わせた実験を通じて,様々な性能のノードを組み合わせることで安価にシステム構築するのが現実的であると考えるに至った.この場合,採点機能などで必要となるCPU性能は高いが学習コンテンツを格納するストレージ性能は低いノードや,逆にCPU性能は低いがストレージ性能は高いノードが考えられる.ノードは均一としていたため,CPUとストレージを分離せず,各ノードは一括して提供するものとしてたが,ノードの性能にばらつきを考慮した場合,CPUの提供とストレージの提供を分離した方が,全体として効率が良いと考えられる.そこで,今後の研究の推進方策として,平成28年度に開発した枠組みをCPUの提供に限定し,ストレージの提供手法としては,既存のオブジェクトストレージ技術が応用する手法を開発する. もうひとつの想定していなかった課題として,クライアント側アプリケーションの開発が挙げられる.当初,学習にはウェブブラウザを利用すれば良いと考えていたが,平成28年度の研究を通じて,スマートフォンやタブレットでは,それにふさわしいアプリケーションがないと,実用的に利用することが困難であることがわかった.本研究において十分なアプリケーション開発を行うことはできないが,やり取りされるデータの形式など,e-Learningシステム全体に影響を及ぼす部分については本研究内でも検討する必要がある.今後,プロトタイプ的なクライアント側アプリケーション開発を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での発表を予定していたが,採録に至らなかったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
主として研究成果発表に使用する予定であるが,もしも余裕があれば,研究計画の変更に伴い,オブジェクトストレージ技術の開発,スマートフォン用アプリの試作などに使用する.
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