研究課題/領域番号 |
16K00486
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
坂本 千枝子 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (10507867)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん登録 / がん登録実務者 / サマリー |
研究実績の概要 |
1.教材の整備:(1)教材データベース内のがん登録用模擬カルテの整備:電子教材データベースに模擬診療記録を登録してがん登録演習用サマリーを作成するため、胃・肺・肝・大腸・乳房・膵臓・前立腺がんの症例を用意した。(2)電子教材データベース機能強化:化学療法・放射線療法等治療経過を登録してエクセルに出力する機能を追加した。(3)電子的教材の作成:①模擬診療記録を乳がん3症例、胃がん2症例、大腸がん、肺がん、前立腺がん各1症例ずつ登録した。②シェーマや画像診断の参照ができるように各症例に登録した。③サマリーには診断名と国際疾病分類コード、手術名および処置・検査名等の患者基本情報に入院経路と紹介元、退院経路と紹介先等を加えた患者基本情報の欄と、診療概要として主訴、現病歴、既往歴、合併症、家族歴、入院時身体所見、入院時検査所見、手術および処置、病理所見、入院後経過、退院時処方等の項目を設けた。(4)乳がん症例を利用して、化学療法の治療経過表を登録した。 2.がん登録システムの構築とデータベースの整備:(1)国立がん研究センター提供の全国がん登録様式と院内がん登録標準登録様式2016年版を利用して、エクセルでがん登録演習シートを作成した。がん登録システム完成までの教材として使用する。(2)データベース構築の作業として、①基本情報 ②腫瘍情報 ③初回治療情報 ④生存状況情報 ⑤管理情報の各テーブルをエクセルで作成した。現在、各情報に含まれる項目についてテーブルを作成中である。(3)①~⑤のテーブルを利用してファイルメーカーにテーブルを登録した。 3.教材を利用した授業:(1)がん登録実務経験者と未経験者を対象に胃がん症例のサマリーとがん登録演習シートを利用して演習を行い、教材の評価をした。(2)がん情報の分析例として、DPCデータの様式1を利用してがん疾患に関連する要因分析の演習をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、大学院で以前使用していた既存のがん登録システムを利用してがん登録システム構築を計画していたが、システムも古くなっていたことからファイルメーカーを利用して初めから構築することにした。そのため、ファイルメーカーのデータベース作成に時間を要している。また、国立がん研究センターから提供される院内がん登録標準登録様式の2016年版の整備が遅れていたことも、データベース構築に取り掛かることを遅らせたと考える。一方、教材作成のためのがん疾患症例の収集作業では、研究協力施設の電子カルテシステムでは紙ベースでしかデータ取り出しができないため、すべての情報を一旦紙で出力する必要があった。そのため、電子カルテの操作に慣れるまで、個人情報に配慮しつつ紙ベースデータの出力とそれをPDFに取り込む作業、取り込んだ後の紙の廃棄処理等に予想以上の時間を要してしまったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.教材作成:(1)院内がん登録の5大がんの症例を収集するほか、5大がん以外で最近増加傾向にあるすい臓がん、男性では前立腺がん、女性では卵巣がん、子宮がんの症例も登録していく。(2)5大がんについては基本となるものを臓器別に3症例を目標に模擬診療記録として登録する。模擬診療記録をもとに内容にバリエーションをつけたがん登録演習用サマリー(以下サマリー)を作成し、がん登録実務者の経験に合わせた教材の数を増やす。バリエーションをつけて作成したサマリーは、研究協力施設の臨床医の内容監査を受けて使用する。 2.がん登録システム構築:(1)データベースの構築を急ぎ、レコードを登録できるようにする。(2)解釈の難しい登録項目には定義を参照できるようにする。(3) 全国がん登録項目と院内がん登録項目の違いがわかるように登録画面を構築する。この工夫で、全国がん登録のみを対象とする施設のがん登録担当者ばかりでなく、がん登録実務経験の浅い受講者は基本的ながん登録をまず習得することができるので、受講者のレベルに合わせた対応が可能になると考える。 3. がん登録システム完成まで:サマリーとエクセルのがん登録演習シートを利用してがん登録に必要な情報を正確に見つけ出す演習をして教材の評価をする。 4.データの活用:がん登録システムが完成後も分析の演習ができるまでにデータ登録数がそろわないことが十分考えられる。そこで、研究協力施設の院内がん登録データ、DPCデータ等の診療情報を利用して、がん情報データの利用や分析についての講義と演習を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.物品費はすでにあるものを利用したため、パスワード付きのHDDの購入のみだった。2.研究成果を発表する学会の開催地が東京、横浜と近郊だったため旅費が安くすんだ。3.人件費・謝金は教材作成に必要な教材DBのメンテナンスに時間を要したことで、研究補助者の勤務日数が少なくなった。4.その他は教材DBに新たに搭載する機能を厳選したため、予算を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
1.教材作成の研究補助者に年間通じて作業を依頼する。2.研究成果を発表する学会が北海道、大阪と遠方になるためそれに充てる。3.がん登録協議会の研修会と学術集会に参加して教材作成に役立てる。
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