研究課題/領域番号 |
16K00490
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
石畑 宏明 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (90468885)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | e-learning |
研究実績の概要 |
29年度は,28年度開発した「論理回路」用のインタラクティブツールのトライアル,「並列処理」教育のバックエンドとしてGPGPUを利用した並列処理への対応,新たに「コンピュータアーキテクチャ」講義用のインタラクティブツールの開発を実施した. 論理回路のトライアルでは,150人ほどの講義で毎回本ツールを使用した演習を行わせ,講義の難易度・自分の理解度・講義内容の面白さについて5段階評価のアンケートを実施した.全アンケートを通して,評価4以上が20%,44%,46%と学生からの評価はとても好評であった.なお評価3はどれも4割程度,評価2以下は講義の難易度(難しいと回答)が40%,理解度(わからない)が20%,面白さ(つまらない)が10%であった. 並列処理機能拡張では,バックエンド側でGPGPUを使用した並列処理への対応を行った.GPUを使用するcudaやopenaccといった並列プログラミング言語の実行環境を作成した.講義のためのサンプルプログラムまでは手が回らず,行列乗算のサンプルのみとなっている.Linpack/Lapackなどの,数値計算ライブラリへの対応は手付かずとなった. 並行して,他の科目への適用として,「コンピュータアーキテクチャ」用にインタラクティブツールを作成した.具体的には,クライアント側で動作する,MIPS CPUのアセンブラと命令セットシミュレータである.アセンブラは,webブラウザに,アセンブリ言語のプログラムを貼り付けると,機械語の命令列(テキスト)が表示される.命令セットシミュレータは,アセンブラが出力した機械語をコピー&ペーストでシミュレータに貼り付けると実行できるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論理回路のツール使用では,当初の目論見通り学生から高評価が得られた.特に,講義内容が面白いと思う学生が40%,普通と回答した学生も入れると80%にもなったのは大きな成果である.コンピュータアーキテクチャ用のツールであるMIPSのアセンブラ・シミュレータは,プログラム開発用のツールの資産を利用し,さらに使用する命令数を講義に必要なもののみに制限することにより短期間で開発できた.来年度の講義で使用を試みる. GPU対応の,並列処理用バックエンドは,対応するコンパイラを組み込むだけなので比較的容易に機能追加が行えた.動作確認テストも済んでおり,開発は順調である.今後,学生に提供する穴埋め形式の課題の作成とクラスでの大人数での試行を行う.クラウド上の計算機リソースを必要に応じて利用する改良については,基本的な調査を行い大きな課題(根本に関わるような問題)を見出すことはなかった.また,演習システムについてこれまでの成果を情報処理学会英文論文誌へ投稿し,採録となった.
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今後の研究の推進方策 |
30年度は,コンピュータアーキテクチャ講義の試行,クラウド環境への対応,ディープラーニング教育への対応を行う.「コンピュータアーキテクチャ」講義用の機能は今年度開発したので,それを使用した講義を実施し効果を確認する.機能の不足などあれば並行して開発・改良を続ける.クラウド環境への対応についても検討を続ける.
また人工知能関連の技術,特にディープラーニングは昨今話題となり,学生も非常に興味を持っている.この技術を簡単に実行できるようバックエンド側クライアント側ともに環境構築を行う.プログラミング言語pythonと幾つかのディープラーニングフレームワークに対応し,学生が簡単に人工知能のプログラムを記述・実行できる環境を提供する.人工知能のトレーニングを行う上ではある程度大量のデータが必要となるが,トライアルに使用されるような基本的なデータは事前に揃えておき,webからpythonのコードを投入するだけで,簡単に処理が体験できるシステムとする.学生のPCには強力なGPUが搭載されていることは少ない.このためディープラーニングの演習でも,学生のPCに乗り切る程度の小さなモデルを使用してあまり多くないデータで実験することになる.折角興味を持ってトライアルするのであるから,現実規模の大規模なモデルを実際に必要となる程度大量のデータでトレーニングできるようにするなど人工知能の醍醐味を味わえる様な環境にしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初国際会議へ投稿・発表しようと考えていたが,英文論文誌への投稿としたため出張旅費を使用しなかった.投稿した論文の論文掲載料が次年度支払いになった.また,アンケートの集計を自分で行ったため謝金は使用しなかった.さらに,購入したPCが見積もりよりも多少安かった.以上の理由により予算との差異が生じた.
使用計画は,国際会議への旅費に430千円,物品として,バックエンド計算機であるGPUマシン2台(400千円x2),その他90千円の予定である.
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