睡眠は日常生活における活動と密接な関係を持つため、睡眠障害や睡眠不足は、人が本来発揮できる行動に対し大きな制限となる可能性を持つ。日本人は他の先進諸国と比べて睡眠時間が短いとの調査結果が経済協力開発機構(OECD)等により報告されているが、10代および20代の日本人はICTの高度化とスマートフォン社会の到来により十分な睡眠時間と質が確保できない要因が増加し、夜型化が進んでいると考えられる。特に、大学生の場合は自由な時間が比較的多いため生活パターンが乱れ、それが学習の進展に影響する可能性がある。 従来、大学生の睡眠についての研究はピッツバーグ睡眠質問票などの質問票による学生からの回答データを分析したものが多い。一方、身近なIoT(Internet of Things)であり、近年、キャンパスにおいても学生の利用が始まっているウェアラブル端末の着用により、生体データをPCに直接取り込むことができる。そこで、睡眠時間帯の改善を希望する1名の学生に対し、2017年1月から11月までの間、リストバンド型とメガネ型のウェアラブル端末を利用した生体データを取得した。また、その先行研究として2016年に12週間に渡って大学生1名の睡眠時間、歩数、BMI値のデータを取得した。本年度は、これらのデータを使い、睡眠時間や睡眠時間帯を基準にした生活の改善事例について考察するため、睡眠時間帯と睡眠時間との関係の可視化、及び睡眠状態と授業での集中度の相関関係の分析を試みた。この結果、大学生の睡眠状況を自身が自覚するための方法としてリストバンド型ウェアラブル端末が有効であること、また、生活リズムが不規則になる原因はスマートフォンの過度な利用にあること、さらに帰宅時刻、睡眠開始時刻、睡眠終了時刻、及び睡眠時間などの生活パターンを可視化することが睡眠時間帯の改善に役立つことを検証することができた。
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