研究課題/領域番号 |
16K00499
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
尾関 孝史 福山大学, 工学部, 教授 (40299300)
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研究分担者 |
渡邊 栄治 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (20220866)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 授業評価 / 授業改善 / 受講者 / 講義 / ノーティング / 顔の向き / 時系列解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ビデオカメラ及び電子ペンなどの電子ツールを利用した授業評価・改善システムを提案する。「受講者の動作」や「受講者が作成する電子ノート」の解析をリアルタイムに行い、受講者の授業への集中度を定量的に検証する。更に、同システムでは、授業改善のための情報を授業中にリアルタイムに講師に提供できることも目標とする。このうち、平成28年度の課題は、以下の2テーマである。 (1)固定カメラ及びウェアラブルカメラを用いた個々の受講者の顔の向きの推定 (2)電子ペンを用いた個々の受講者のノーティングのタイミングの解析 これに対して、平成28年度では、以下のそれぞれの研究成果を得た。 テーマ(1)に関しては、講義風景を撮影した映像から学生たちの顔の上下の動きを推定する方法を提案した。 顔の位置を知るために、あるサンプリング間隔ごとにHaar-like分類器と肌色情報を用いて顔の位置を自動的に検出した。そして,検出された顔枠内の肌色の画素数の変化を調べることで,学生が正面の黒板の方向を向いているかどうかを判断した。実験の結果、ノートの筆記をする際に顔をあまり動かさない学生を除けば、受講者の状態を「講師又は黒板を見る状態」、「ノーティングを含むその他」の2つの状態に自動的に分割できることがわかった。 テーマ(2)に関しては、電子ノートを用いて、講義における学生のノーティング状態を記録し、そのデータのグラフを作成した。また、講師の板書のタイミングと学生のノーティングデータの類似度をDPマッチングで定義した。実験の結果、提案手法で、「筆記区間」と「未筆記区間」を正確に判断することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は2つのサブテーマ (1)固定カメラ及びウェアラブルカメラを用いた個々の受講者の顔の向きの推定 (2)電子ペンを用いた個々の受講者のノーティングのタイミングの解析 である。 特にテーマ(1)の受講者の顔の向きを推定するために、各受講者のウェアラブルカメラを利用した方法の開発の部分が遅れている。一方でテーマ(1)の固定カメラを用いた解析方法とテーマ(2)の電子ペンを用いた解析方法は開発、実験による検証、外部発表を行うことができている。このことから、予定より、若干遅れている状態であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に完結できなかったサブテーマ(1)の「ウェアラブルカメラを用いた個々の受講者の顔の向きの推定」を行うとともに、平成29年度のサブテーマ (3)各受講者の状態に基づく受講者全体の授業への集中度の推定 に取り組む予定である。 受講者個人および受講者全体の授業への集中度の定量的な分析のため、受講者の「黒板や講師を見ている状態」、「ノーティングをしている状態」、「その他の状態」の3つの状態の遷移から、個々の受講者の授業への集中度を数値化する方法を提案する。更に、受講者全体の授業への集中度の数値化も試みる。例えば、「多数の受講者が講師の説明を聞くため、講師または黒板を凝視している時間帯」や、「多数の受講者が板書を写すことに専念している時間帯」などを特定し、これらの時間帯が授業時間全体に含まれる時刻やその割合を調査する。なお、平成29年度では、授業風景の映像や電子ノートによるノーティングのタイミングといった客観的なデータの解析は授業後にまとめて行い、受講者の授業への集中度の分析手法を確立することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度末に行う予定の実験が、受講者を十分に集めることができなかったことから、実験環境の整備に留まった。このため、予定していた謝金の支払いがなかったため。また、平成28年度に、データ解析用ワークステーション(40万円程度)を購入予定であったが、平成28年度はリアルタイム処理が必要な実験を行わなかったため、次年度に解析用サーバの購入を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
多数の受講者に対する実験を平成29年度に行う予定である。また、平成29年度に、データ解析用ワークステーションを購入する予定である。
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