本研究課題では、ビデオカメラ及び電子ペンなどの電子ツールを利用した授業評価・改善システムを提案している。「受講者の動作」や「受講者が作成する電子ノート」の解析結果をリアルタイムに講師に提供できることを目標としている。このうち平成30年度の課題は、以下の2テーマである。 (1)各受講者の状態に基づく受講者全体の授業への集中度の推定 (2)受講者全体の集中度のリアルタイムな視覚化と講師への授業支援システムの構築 これに対して、平成30年度ではそれぞれ以下の成果を得た。 テーマ(1)に対しては、昨年度、ビデオカメラで受講者の受講の様子から、受講者が授業に集中しているかどうかを数値化するシステムを提案した。しかし、教室のような特定の学生達が集まる場所での映像の撮影は、個人プライバシーの侵害がある。そこで、個人識別がしにくい平滑化映像を利用するシステムへの改善を試みた。改善システムでは、平滑化映像に合わせたHaar-like分類器を作成して、映像中の受講生の正面顔を検出した。実験の結果、個人識別が難しい平滑化映像からでも、受講生の顔の向きの解析が十分可能であることがわかった。 テーマ(2)に対しては、受講者の集中度は受講中の筆記状態の変化にも表れると考えた。そこで、受講者の筆記状態のデータをリアルタイムに解析し、講師のパソコンにリアルタイムに視覚化するシステムを開発した。そのシステムでは電子ノートを用いて各受講者の筆記状態のデータをリアルタイムに取集し、ネットワークを通して、1秒ごとにそのデータをサーバに送信する。そして、それらのデータをサーバで解析して、受講者全体の筆記状態のグラフを講師のパソコンにリアルタイムに表示する。実験の結果、このシステムを利用することで、講師は、多くの受講者が筆記中で忙しい状態にあるかを一目で判断できることがわかった。
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