研究課題
ピアノ初心者向けの演奏支援システムの構築を行ってきた.同音連打をするだけで楽曲が進行するし,ピアノ練習の経験や,楽譜を読む能力がなくても,誰でも演奏を楽しめるようにした.具体的には,自動伴奏システムEurydice(ユリディス)に与えるSMF(standard MIDI file)に特別なトラックを用意し,音楽キーボードで演奏不可能な音高をわざと配置した.たとえば楽曲の拍子の分母が4の場合には四分音符を並べ続ける.Eurydice は楽曲中のどの位置にもジャンプして奏者の演奏している楽譜位置に追従するが,大きな音高誤りが生じた場合には,順次進行の確率が最も高くなる.これにより,どの鍵を打鍵しても常に楽曲を順次進行させられる.介護老人保健施設で適用し,定性的にではあるが,非常に良好な評価が得られた.これについては,保育所での検討も展開している.タテ線譜とEurydice の併用については,木更津高専のオープンキャンパスで紹介しており,ピアノ演奏ができない中学生,タテ線譜を初めて見た中学生や保護者でも最後まで演奏できている.また,誤演奏をしても正しい音が出力されるようにしてピアノに対する心理的な距離を縮める検討を継続している.また,タテ線譜の自動生成における自動運指決定の取り組みに関連し,ピアノ運指データベースの作成を本格化した.楽曲の一部を切り出し,音楽大学を卒業した方々に研究補助協力を依頼し,楽譜に運指を書き込む作業を実施した.その他,関連する研究として,演奏と楽譜のアラインメントのための演奏誤りの検出と後処理,ピアノ音高認識,リズム記述などに取り組んだ.
3: やや遅れている
介護老人保健施設での取り組みの定量的な評価が行えていない.施設スタッフは個人情報保護を理由に,写真撮影すら難色を示すほどで,バイタルサインの計測に対して非協力的であった.ピアノ練習支援システムに必要な,映像からのピアノ運指の精度よい取得が予期に反して困難であった.ピアノ運指データベースの作成準備が整い,楽譜への運指の記入を開始した.しかしながら,楽譜の切り出しに相応の時間を要し,運指書き込みの実施は準備した150曲のうちの一部に留まった.
介護老人保健施設のスタッフに,研究倫理に即して個人情報を保護するということを,これまで以上に十分に説明して理解を得る.ピアノ運指の取得については,将来の実用化を見据えて安価で手軽な映像カメラからの入力を想定してきたが,マーカやデータグローブなどの物理的な補助も用いることを検討する.ピアノ運指データベース作成については準備が整っており,研究補助協力者の人数も大幅に増強した.コンピュータへの入力のための専用ソフトウェアはすでに開発済であるので,楽譜への運指の書き込みと並行して入力作業を行う.
ピアノ運指の楽譜への書き込みに関する研究補助作業について,当初予定していた3月分がキャンセルとなったため,謝金支払分が残金となった.H30年度に繰り越して,増強した研究補助協力者への謝金の一部に充てる予定である.
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (3件)
IEEE/ACM Transactions on Audio, Speech and Language Processing
巻: 25 ページ: 1846-1858
10.1109/TASLP.2017.2722103
巻: 25 ページ: 794-806
10.1109/TASLP.2017.2662479
http://beam.kisarazu.ac.jp/~saito/research/research_list.html
http://eita-nakamura.github.io/index-ja.html
https://researchmap.jp/sagayama/?lang=japanese