研究課題
本研究の目的は、新時代に突入した我が国の高時間・高空間解像度の静止気象衛星ひまわり8号のエアロゾルデータを高確度で検証することである。これは、ひまわり8号が欧米の新世代の静止気象衛星に先駆けたものである上、高時間・高空間解像度データに基づくこれまでにない高度な応用研究を世界に先駆けて開拓するために不可欠である。アジアを中心に構築した独自の地上リモートセンシング観測網(SKYNET)だけでなく、他の国際観測網(AERONET, GAW-PFR)の観測機器を保有し、それらの国際観測網と連携して高確度に検証比較を行う応募者のみが可能な研究である。H28年度は、ひまわり8号のエアロゾルデータ等を千葉大学のSKYNETデータ解析サーバーに整備した。また、SKYNET千葉サイトに設置されている各観測網の観測測器を検定した。その上で、SKYNET千葉サイトにおいて、SKYNET, AERONET, WMO-PFRの3測器による同時観測を開始し、国際基準で相互比較を実施、エアロゾル光学的厚さ(AOD)が±0.01以内で一致したことが分かった。また、比較的大きな差は観測時刻や時間分解能の違いによって生じたことが分かった。評価結果を基に測器およびアルゴリズムの改善を細部まで検討し、新しいアルゴリズムを開発した。その上で、SKYNETデータとひまわり8号データの予備的な比較検証を実施した。SKYNET千葉サイトにおいて、ひまわり8号のAOD値が0.05-0.10程度、系統的に過大となっていることが分かった。しかしながら,現段階においても,日々のAODの変動だけでなく,日内変動も地上観測データと整合していることが分かった。特に日内変動においてはMODIS等の低軌道衛星からは決して得られない。このように,ひまわり8号によってエアロゾルの面的な情報だけでなく,日内変動の情報も得られることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、ひまわり8号のエアロゾルデータを千葉大学のSKYNETデータ解析サーバーに整備した。また、並行して、SKYNET千葉サイトに設置されている各観測網の観測測器を気象研究所やハワイ・マウナロアでの観測等を基に精密に検定した。その上で、SKYNET千葉サイトにおいて、SKYNET, AERONET, WMO-PFRの3測器による同時観測を開始し、国際基準で相互比較を実施、エアロゾル光学的厚さ(AOD)の相違を定量的に評価、その要因を明らかにした。評価結果をもとに測器およびアルゴリズムの改善を細部まで検討し、世界最高レベルのデータ確度・精度を担保するアルゴリズム開発を進めた。その上で、SKYNETデータとひまわり8号データの予備的な比較検証を実施し、ひまわり8号データの系統的な誤差を定量的に評価するとともに、有用性を明らかにした。以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
ひまわり8号のエアロゾル等のデータの整備、予備的な比較検証を継続する。最新のひまわり8号のデータを整備するにあたり、1) 研究代表者が気象庁の「静止衛星データ利用技術懇談会」の委員を務めていること、2) 研究代表者の所属がひまわり8号の主データサーバーのひとつである千葉大学環境リモートセンシング研究センターであること、3) 研究代表者がJAXA GCOM-Cミッションの大気プロダクトの検証リーダーを務めていること、4) 研究代表者が科学技術振興機構・CREST・研究領域「分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論及び基盤技術の創出と融合展開」の「Energy Management System(EMS)のためのひまわり8号データの利活用の検討」プロジェクトの中核メンバーであること、を最大限活用する。その上で、これまでの検証研究を発展させる形で、SKYNET・AERONET・GAW-PFRの地上観測網データをひまわり8号の通年データと比較する。比較はひまわり8号のフルディスク内に含まれる複数の観測網主要サイトに拡張し、ロバストな検証を実施する。これらの比較検証結果を統計的に解釈し、ひまわり8号のエアロゾルデータの系統誤差およびランダム誤差を高確度で明らかにする。さらに高次の検証を実施する工夫として、サイト毎にエアロゾルデータのヒストグラム等の解析を施し、雲スクリーニングに細心の注意を払う。SKYNET千葉サイトにおいては、既設の他の多様な観測機器(日射計、ライダー、マイクロ波放射計、4方位角MAX-DOAS(多軸差分吸収分光法))も援用し、エアロゾル、雲、水蒸気の鉛直・水平分布の不均一性も考慮する。これにより、各観測網固有の観測誤差に依らない、応用研究に使用すべきひまわり8号エアロゾルデータの絶対誤差を提案する。
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