研究課題
本研究では全地球観測衛星データを用いて,全地球スケールでの二酸化炭素固定量(総生産量)を推定するアルゴリズムに植生の生理的情報を組み込み,総生産量推定精度向上をめざす。人工衛星による総生産量推定には,ある期間の光量と総生産量との線形関係が仮定されることが多い。一方,光合成速度の光依存は非線形であることはよく知られている。本研究で開発するアルゴリズムの特徴は,総生産キャパシティー推定に光ー光合成曲線を導入すること,植生の気孔閉鎖による光合成速度の日中低下をリモートセンシング技術で推定する方法を開発し,衛星データ解析に適用する点である。光ー光合成曲線を用いた総生産キャパシティー推定に関しては,植生タイプ毎,いくつかの気候帯でパラメータを同様に扱えることが明らかとなった。総生産キャパシティーから光合成の低下量を推定するアルゴリズムに関しては,樹冠を一枚の大きな葉と考えるモデルで計算した結果,光合成速度が日中低下する時間帯では飽差(乾燥度)の寄与が高かった。衛星観測の地表面温度と飽差との関係を調べたところ,乾燥域では衛星観測の11時と13時の地表面温度から飽差が推定できる可能性があることが明らかとなった。以上より,衛星の地表面温度から計算した樹冠コンダクタンスの時間変化を,樹冠コンダクタンス指標と定義し,衛星データに適用し,総生産量の再現性を調べた。その結果,全地球観測衛星で地表面温度の観測結果は11時と13時にしか得られないため,日中低下の開始時間が11時より早い場合は過小に,11時より遅い場合は過大評価することが明らかとなった。衛星での地表面温度の観測頻度が上がれば,日中低下の推定精度は向上し,総生産量推定精度の向上が期待できる。近年,1時間毎に観測する気象衛星の空間分解能は高くなっており陸面過程への利用可能性がある。気象衛星データの利用可能性を調べていく予定である。
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『経済学論叢』(同志社大)
巻: 70/4 ページ: 277-288
Proc. SPIE 10777, Land Surface and Cryosphere Remote Sensing IV
巻: 10777 ページ: 1-7
10.1117/12.2324247