研究課題/領域番号 |
16K00518
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
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研究分担者 |
安元 剛 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (00448200)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サンゴの石灰化機構 / リン酸塩 / 石灰化阻害 / 地下水 |
研究実績の概要 |
本年度は,1)サンゴの稚ポリプを用いた生物活性試験によるサンゴの石灰化機構と各種リン酸塩によるサンゴの石灰化阻害メカニズムの解明,2)陸域の土壌・地下水及びサンゴ礁池内外の海水中の各種リン酸塩の動態解明を中心に調査研究を実施した。 1)に係る研究として,サンゴの稚ポリプを用いた生物活性試験を実施し,蛍光誘導化したリン酸塩試薬を合成し,リン酸塩がサンゴ稚ポリプの表面に吸着していく過程を可視化することに成功した。また,リン酸塩のサンゴ骨格阻害は表面吸着によって引き起こされるため,溶存態リンのみならずリン酸塩負荷量の上昇と共に阻害の程度が多きくなることも明らかになった。2)に係る研究として,陸域の土壌・地下水中における各種リン酸塩の動態解析を実施した。その結果,琉球石灰岩が分布する沖縄本島南部地域における地下水中のリンの輸送形態として,オルトリン酸以外の重合態リン等の溶存無機リン(DIP)やリン酸エステル等の溶存有機態リンの存在の可能性が示唆された.また琉球石灰岩地域の地下水中のリン酸塩の輸送には浮遊懸濁物質(SS)が大きく関わっていることが示唆された。以上の結果より,流域スケールでリン酸塩の海域への流出を把握する際には,オルトリン酸以外の重合態や有機態などの溶存態リンやSSに吸着しているリン酸塩も重要になると推測される.次に,サンゴ礁池内外の海水中における各種リン酸塩の動態解析を実施した結果,サンゴの被度が低い地点で,アンモニア態窒素や全リンの濃度が高い傾向にあった。また,海水中に含まれる数十倍以上の濃度の窒素やリンが底砂の間隙水から検出され,底砂表面にリンが吸着していた。この結果より,陸域から供給された栄養塩は海水中を拡散するだけでなく,海底の砂に多く留まることで,サンゴ礁の回復を妨げていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
琉球石灰岩地域における流域スケールでリン酸塩の海域への流出を把握する際には,オルトリン酸以外の重合態や有機態などの溶存態リンや浮遊懸濁物質に吸着しているリン酸塩も重要になることを見出した。 陸域から供給された栄養塩は海水中を拡散するだけでなく,海底の砂に多く留まることで,サンゴ礁の回復を妨げている可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施した(1)~(2)の研究項目を継続して実施する。さらに,(3)ポリアミンを用いたサンゴの石灰化に適した海水の水質検査方法の確立を行うため,学内外のサンゴや有孔虫の専門家と協力して,沖縄島沿岸や、石西礁湖、与論島沿岸海域において、サンゴや有孔虫の石化化生物の分布や賦存量調査を行い、これまで検討してきたポリアミンを用いた石灰に適した海水の水質検査法の整合性を評価する。
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