研究課題
温室効果気体や微量気体の発生・沈着過程は対流圏化学と放射強制力の変動を通して大気環境に影響を及ぼす.反応性窒素ガス(主にNO, NO2等の窒素酸化物)やオゾンについては,技術的な難しさゆえに発生量・沈着量の時間変動の解明とその要因解明が遅れている.本研究では,高感度・高時間分解能にて計測可能な装置を開発し,森林での観測に適用することで,反応性窒素ガスとオゾンの発生量・沈着量の時間変動とその要因の解明を試みた.2018年6月26日から7月8日の期間,富士吉田アカマツ林微気象観測タワー(森林総合研究所/山梨県富士山科学研究所)にて,レーザー分光計測装置を用いた渦相関法によるNO2フラックスおよび森林内のO3とNOx濃度プロファイルの計測を実施した.フラックス計測用の大気サンプル口をアカマツ林の樹冠上である26.5 mの地点に設置し,樹冠上の大気をPFAチューブで地上まで吸引し,分析装置に供給して計測を実施した.夜間のフラックスはほぼゼロであったのに対し,昼間のNO2フラックスは,放出を示すことを明らかにした.一般にNO2は森林樹木に沈着・吸収されると考えられているが,本研究では一般的な知見と異なる結果が得られた.新たに2台のレーザー分光計測装置を用いた高感度・高時間分解の特徴をもったNO,NO2同時計測装置を開発した.1台のレーザー分光計測装置に供給する大気試料にオゾンを添加することで,NOをNO2へと酸化し,NOx濃度を得る.もう1台のレーザー分光計測装置でNO2濃度を測定し,NOx濃度からNO2濃度を差し引くことでNO濃度を得る.今後開発した装置を用いて様々な森林生態系における窒素酸化物の吸収・沈着量のデータを蓄積することで,今まで難しかった大気・森林生態系間,および森林生態系内のNO, NO2 のガス交換に関する知見が得られる.
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Journal of Atmospheric Chemistry
巻: 未定 ページ: in press
doi.org/10.1007/s10874-019-09391-4
http://www.ntu.ac.jp/research/kyoin/seimei/kankyo/wada.html