研究課題
今年度は観測データに加え地域気候モデルによる計算結果をも用いて、台風に伴う降水(台風降水)が全体の降水の統計分布(ガンマ分布)に及ぼす影響について調べた。その際、台風降水を全体の降水から除いたもの(非台風降水)について、理論統計分布と経験統計分布の適合度を計算し、全体の降水のそれと比較した。その結果、観測データ、地域気候モデルによる計算結果(現在気候及び将来気候)のいずれを用いた場合でも、全降水から台風降水を差し引くことで日降水量の経験統計分布が理論統計分布に近くなり、適合度が高まることが分かった。このことは、台風を取り除くことによって日降水量の不確実性が低減することを意味する。地域気候モデルによる実験結果から得られた日降水量の将来変化について、ガンマ分布の二つのパラメーター(形状・尺度パラメーター)を使って調べた。地域気候モデルは水平解像度が比較的高いので、日本の各地域によってパラメーターの変化がどのように異なるのか解析した。西日本日本海側では形状パラメーターの変化、南西諸島では尺度パラメーターの変化が主体的であった。形状パラメーターの変化が主体的な西日本日本海側では、強雨が減り弱雨が増える傾向にあった。一方、尺度パラメーターの変化が主体的な南西諸島では、分布関数の形はあまり変化せず全体的に強雨側にシフトした分布へ移行していた。本研究の目的の一つは非台風降水に関する将来予測結果の信頼性を向上させることであったが、観測データ及び地域気候モデルの計算結果からこれを示すことができたことは意義深い。台風降水についても本研究の期間内に詳細な将来予測結果が示されている。
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Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II
巻: 97 ページ: 519~531
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