研究実績の概要 |
本研究の目的は,非火山域における深部流体の分布と上昇過程を把握し,日本列島における変動現象と流体の関係の理解を推進させることである.【課題1】深部流体の指標と考えられる化学的特徴を元に,調査対象となる泉源を選定し,調査及び試料採取を行い,【課題2】希土類元素の測定を行うことで,【課題3】起源と上昇過程の検討に繋げる,という研究実施計画を立てた. その結果,ほぼ計画通りに行うことができ,発展する成果も得ることができたと考えている.初年度と次年度で,中央構造線沿いの泉源を選定し,重要度を加味して,紀伊半島では全域の調査を,四国では特定箇所を把握することを目指し,調査を行なった.採取した試料について,化学組成分析を行い,データ化した. また,希土類元素が深部流体の挙動を探るために有効である,という内容で論文発表を行い(Nakamura et al., 2016),水について高次元のデータベース化を行なう意義を明確にした.また,高次元のデータを解析するために,多変量解析を行う統計的手法の開発(Iwamori et al., 2017)や,地球化学データへの適用を試みている.溶存ガスが泉質の形成過程に与える影響については,Nakamura et al., 2016でも記述し,ガス試料の採取も試みたが,本研究の計画時には含まれていない内容であり,今後の展開として考えていく必要がある. 本研究により,構造線沿いには,スラブ起源流体が低温で脱水する時の特徴を持つ泉源があることが分かった.また,帯水層で沈殿物を生成したと考えられる特徴をもつ泉源が,調査地域の広い範囲に湧出していることも確認された.また,このような深部流体のプレート境界域における振る舞い(Nakamura et al., 2018)と,日本全域での分布(Nakamura et al., 2019)を明らかにすることができた.
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