研究課題/領域番号 |
16K00536
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研究機関 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者 |
丸本 幸治 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (90371369)
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研究分担者 |
新村 太郎 熊本学園大学, 経済学部, 准教授 (10352395)
野田 和俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60357746)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水銀 / 火山・噴気地帯 / 火山灰 / 水晶振動子 / 簡易分析 / 飛行観測 |
研究実績の概要 |
火山・噴気活動によって放出される水銀の環境影響を評価するため、はじめに2014年~2016年にかけて阿蘇火山の噴火により放出された火山灰中の水銀濃度を計測した。その結果、火山灰中の水銀濃度と水溶性イオン成分濃度は噴火のタイプによって大きく異なることがわかった。また、マグマ水蒸気爆発時には水銀濃度と火山性微動の振幅に高い正の相関関係がみられた。次に、火山ガス中水銀の簡易計測法として水晶振動子式水銀検知センサ(QCM-Hgセンサ)の妥当性について評価するため、霧島地方の噴気地帯において噴気ガスの水銀濃度を観測した。観測の結果、噴気口から少し離れるだけでも噴気口の濃度に比べて数百~1000分の1の濃度になることがわかった。また、噴気地帯の土壌から放出される水銀についてQCM-Hgセンサと従来の携帯型原子吸光式Hgとの並行試験を行い、両者の観測値が良好な相関関係にあることがわかった。しかしながら、観測値にはズレがあり、その要因を今後明らかにしていく必要がある。一方、火山・噴気ガス中水銀の上方拡散について調べるため、はじめにマルチコプターの飛行安定性について検討した。その結果、複雑な地形による風、噴気孔上空の強い上昇気流による影響を確認したが、十分に安定した飛行およびホバリングが可能であることがわかった。次に、温度・湿度センサ等を掲載したロガーを搭載させて噴気地帯において飛行観測を行った結果、良好に動作し、ワイヤレスデータ送信についても混信などの問題もなく、良好であった。しかしながら、噴気に含まれる水蒸気や微少な水滴が機体外部に付着していることが確認され、距離によってはデータ受信ができない状況も示されたため、噴気ガス中水分の影響や遠距離送信ユニットの使用による対応について検討していく必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年4月14日と16日の熊本地震の影響及び同年10月8日の大規模な噴火により阿蘇火山周辺への立入が困難となった。そのため、同地域でのイベント的な観測も実施できなくなった。しかしながら、QCM-Hgの性能向上に係わる室内実験やマルチコプターの飛行安定性に関する検討を行い、十分な準備を整えた上で、代替地として霧島地方の噴気地帯での水銀観測を実施した。これにより、QCM-Hgと従来法との比較やマルチコプターを用いた飛行観測とワイヤレスデータ通信の検討において平成28年度当初の研究計画を満足する成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
QCM-Hgセンサの観測値の信頼性について引き続き検討していくとともに、同センサを用いた多地点同時観測を阿蘇火山地帯もしくは霧島地方の噴気地帯において実施する。また、QCM-Hgセンサ等各種センサユニット、遠距離用データ通信ユニット、動作用バッテリなどの測定システムの軽量化をはかり、普及型マルチコプターの搭載重量である総計500g以内のシステムを構築する。そして、同システムを搭載したマルチコプターを使用して人の立ち入りが制限されている区域における飛行観測手法の検討を行う。水銀の観測と同時に二酸化硫黄の観測についても検討し、水銀濃度と二酸化硫黄濃度の比率と二酸化硫黄放出フラックスから水銀のフラックスを計算する。また、火山ガス及び噴気ガス中の水銀の数か月の長期観測を開始する。これらの観測データと火山活動の指標となる地震波観測、熱観測、GPS観測などの各種データとの関連性を調べ、火山・地熱活動が火山噴出物中の水銀濃度に与える影響について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震及び阿蘇火山の大規模噴火により阿蘇火山地帯への立ち入りが禁止となり、当初予定していた阿蘇火山地帯における数回の現地調査を断念せざるを得なかった。そのため、当該年度の観測に係わる費用を繰り越し、次年度以降の阿蘇火山地帯における現地調査に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
(国水研)水銀分析用試薬、水晶振動子等消耗品253,824円、旅費150,000円、研究補助450,000円、(熊本学園大)マルチコプター及び周辺機器200,000円、マルチコプター搭載放射温度計200,000円、マルチコプター用消耗品65,731円、旅費50,000円、(産総研)試薬、水晶振動子等消耗品57,476円、旅費270,000円
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