研究課題/領域番号 |
16K00536
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研究機関 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者 |
丸本 幸治 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (90371369)
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研究分担者 |
新村 太郎 熊本学園大学, 経済学部, 准教授 (10352395)
野田 和俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60357746)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水銀 / 二酸化硫黄 / 火山・噴気地帯 / 水晶振動子 / 飛行観測 |
研究実績の概要 |
前年度の噴気地帯における予備的な飛行観測において水蒸気の影響により機体制御が不安定になることがわかったため、防水用の新しい機体を準備した。一方、QCM-Hgセンサを実際に噴火口付近で使用し、各種環境データを取得した。新たに遠距離用データ通信ユニットを搭載し、無人航空機からもリアルタイムでデータを確認可能とした。また、吸引ポンプを含めて測定システムについて全体に総重量が500g程度とした構成とし、無人航空機の運用の制限を受けにくい気体採取用外付けシステムを構築した。このシステムを新しい無人航空機に実際に搭載させ、水晶振動子による水銀計測を阿蘇火山噴火口上空で行い、素子の分析を含めた基本動作を確認した。同時に従来法である金アマルガム捕集管により噴火口上空の気中水銀を採取した。この飛行観測時には飛行中に機体が不安定となる現象がみられたため、観測後に原因を調べたところ、小雨による電気的トラブルの可能性があることがわかった。しかしながら、その後の調査によりこれは初期不良であることがわかったため、以後は問題なく使用できると考えられる。火口上空の気中水銀を捕集した捕集管を実験室に持ち帰って分析した結果、その濃度は100 ng/m3程度であった。この濃度はQCM-Hgセンサで計測できる範囲を下回っているため、同センサの使用は困難であるが、捕集管と小型ポンプを無人航空機に取り付けることにより従来法を用いて火口上空の大気中水銀濃度を計測できることがわかった。さらに、この捕集管の大気吸引口に二酸化硫黄(SO2)捕集用フィルターを取り付けることにより水銀と二酸化硫黄の同時計測が可能である。金アマルガム捕集管を用いた水銀計測におけるSO2捕集用フィルター由来のコンタミネーションについて評価したところ、その影響はほとんどないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
阿蘇火山上空における気中水銀の観測を行うことができ、概ね良好な結果を得ている。また、SO2フィルターと水銀捕集管を含めた小型無人航空機に搭載可能なシステムを構築することができ、SO2と水銀の同時観測が可能となった。以上のことから、今年度当初の目的を概ね達成していると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
QCM-Hgセンサの観測値の信頼性について引き続き検討していくとともに、水銀の観測と同時に二酸化硫黄も観測し、水銀濃度と二酸化硫黄濃度の比率と二酸化硫黄放出フラックスから水銀のフラックスを計算する。また、火山ガス及び噴気ガス中の水銀の数か月の長期観測を開始する。これらの観測データと火山活動の指標となる地震波観測、熱観測、GPS観測などの各種データとの関連性を調べ、火山・地熱活動が火山噴出物中の水銀濃度に与える影響について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由>阿蘇火山地帯への立ち入りは平成29年度も引き続き禁止となっており、その期間でも阿蘇市の許可を得て調査を実施した。しかしながら、高頻度の現地調査は断念せざるを得なかった。そのため、当該年度の調査に係わる費用を繰り越した。火口周辺への立ち入りは平成30年4月24日に解除されており、頻繁に調査を行うことが可能となったことから、次年度以降の阿蘇火山地帯における現地調査に繰越金を使用することとした。 <使用計画>(国水研)小型ポンプ2台300,000円、水銀分析用試薬、水晶振動子等消耗品238,199円、旅費150,000円、(熊本学園大)マルチコプター周辺機器150,731円、旅費50,000円、(産総研)試薬、水晶振動子等消耗品209,389円、旅費200,000円
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