研究課題/領域番号 |
16K00538
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
桑原 義和 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (00392225)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線耐性 / ミトコンドリア / 活性酸素 / ρ0細胞 / 放射線療法 / ドセタキセル / ミトコンドリアDNA / X線 |
研究実績の概要 |
標準的ながんの放射線療法である2 Gy/dayのX線を照射し続けても増殖する細胞をヒト由来がん細胞株から樹立し、臨床的放射線耐性(clinically relevant radioresistant; CRR)細胞とした。放射線耐性の要因を抗がん剤との交叉耐性から明らかにするために、シスプラチンやブレオマイシンなど様々な抗がん剤への感受性を解析した。その結果、樹立した全てのCRR細胞は微小管脱重合阻害剤であるドセタキセル(docetaxel; DTX)に交叉耐性を示すことが分かった。DTX抵抗性には、βチューブリンや薬剤排出ポンプであるMDR1などの関与が報告されているものの、CRR細胞では否定された。10 GyのX線照射後及びDTX処理後、ミトコンドリア(mitochondoria; mt)由来の活性酸素種を調べると、親株では検出されたが、CRR細胞ではほとんど検出されなかった。また、PCRで細胞当たりのmtDNA量を解析すると、CRR細胞では親株に比べてmtDNA量の顕著な減少がみられた。以上から、mtの代謝活性が、がん細胞のX線及びDTX抵抗性に関与していることが示唆された。そこで、X線及びDTX感受性とmtとの関連を解析するために、mtDNAが欠失しているρ0細胞の樹立を試みた。HepG2、SAS、HeLa細胞からρ0細胞の樹立を試みたところ、SAS及びHeLa細胞から樹立することに成功した。また、それぞれのCRR細胞から、ρ0細胞の樹立を試みたところ、放射線抵抗性の形質維持のためのX線を照射していないHeLa-R細胞から、ρ0細胞を樹立することに成功した。SAS-ρ0及びHeLa-ρ0細胞は、X線単回照射及びDTXに抵抗性を示したが、2 Gy/dayのX線を照射すると死滅した。HeLa-R-ρ0細胞が2Gy/dayのX線照射に抵抗性を示すのかを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異動に伴い、一時的にX線照射装置の使用ができなくなった。ただし、現在は自由に使用できる環境である。
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今後の研究の推進方策 |
X線及びドセタキセル抵抗性へのミトコンドリアの関与をさらに調べるため、代謝解析の結果を精査する。また、鹿児島大学でミトコンドリアを研究している研究者と共同研究を行い、密に連絡を取り合うことで、今後の研究を発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
異動に伴い、一時的にX線照射装置の仕様ができなくなったため、短期間、細胞培養を伴う実験を停止した。そのため、培地・血清等を購入しなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、X線照射装置を自由に使用できる環境になった。細胞培養をすでに開始しており、滞った研究を速やかに実施する。
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