研究課題
標準的放射線療法である2Gy/dayのX線を照射し続けても増殖する臨床的放射線抵抗性(clinically relevant radioresistant; CRR)細胞を樹立した。CRR細胞はX線照射後及び微小管脱重合阻害剤であるドセタキセル処理後にミトコンドリア(mitochondria;mt)からの活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)が検出されないことを明らかにした。また、CRR細胞のmt膜電位は親株に比べて低下していた。従って、CRR細胞のmtは機能が低下していることが示唆された。mtの機能が低下しているmtDNA欠失(ρ0)細胞の樹立を試みた。親株であるSAS及びHeLa細胞からρ0細胞を樹立することが出来たものの、それらのCRR細胞から樹立することは出来なかった。CRR細胞はX線抵抗性の形質を維持するため、2 Gy/dayのX線を毎日照射しているが、この照射を1年以上やめてもCRR形質が維持されることが分かった。CRR細胞に1年以上X線を照射していないHeLa-R-NoIR細胞からρ0細胞を樹立することに成功した。HeLa、HeLa-ρ0、HeLa-R-NoIR及びHeLa-R-NoIR-ρ0細胞に2 Gy/dayのX線を照射するとHeLa-R-NoIR細胞のみ30回照射後も生存した。このことから、CRR細胞のmt活性は低下しているもののX線抵抗性の形質にはmtの存在が不可欠であることが示唆された。また、ρ0細胞からCRR細胞を樹立することは出来なかった。ρ0細胞はX線単回照射にはρ+細胞に比べて抵抗性を示すことが分かっている。以上から、mtの機能不全はX線単回照射への抵抗性には関与しているものの、分割照射への抵抗性にはmtが何らかの役割を担っていることが示唆された。
3: やや遅れている
医学部キャンパスの引越に伴い、一時的に実験が出来なくなったため。
医学部の引越に伴い、X線照射装置が更新された。使用するX線照射装置により、細胞への吸収線量が異なることから、これまでの解析結果と整合性が合わなくなる可能性も考えられる。実際に、CRR細胞を分譲した一部の研究機関ではCRR細胞に2Gy/dayのX線を照射すると死んでしまう現象が報告されている。このような事態を避けるため、更新したX線照射装置を用いて、新たにCRR細胞を樹立するとともに、これまでの解析結果が同様に得られるのかを追試する。CRR細胞からのρ0細胞の樹立は、HeLa細胞からのみ成功している。CRR形質へのmtの役割の普遍性を探るため、他の細胞株からもCRR-ρ0細胞の樹立を試みている。ρ0細胞の解析から、CRR形質にはmtの機能低下は関与しているものの、完全に機能不全を起こした場合には、CRR形質は消失することが分かった。ミトコンドリア(mt)の呼吸鎖複合体にはそれぞれに特異的な阻害剤がある。そこで、それぞれの阻害剤を用いてどの複合体がCRR形質に関与しているのかを探る。また、低酸素下で細胞を培養するとその代謝はmtに依存せず解糖系に移行し、mtDNAは存在するもののρ0細胞と酷似した状態になる。また、低酸素下で培養した細胞はX線に抵抗性になることも古くから知られている。そこで、低酸素下で1か月以上培養した親株、CRR細胞、及びそれらから樹立したρ0細胞に2Gy/dayのX線を照射して生残率を解析する。
医学部キャンパスの引越に伴い、一時的に細胞の培養を停止した。次年次使用額は、培地やフラスコなどの細胞培養に使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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