研究実績の概要 |
福島県東京電力第一原子力発電所(FDNPP)から土壌に放出された放射性Cs(Cs*)は,土壌に固定され、水に溶解しないと説明されてきた。しかし、FDNPP放出Cs*は非水溶性顆粒状(G-Cs*,Cs-ball)で放出された、とみるべきで、その証拠が次々と報告され、最終的にそれが確立した。しかし,問題は、それなら何故野菜等の農産物にCs*が入り込むのか?の疑問が解けない。 我々は、野山のリターに付着したG-Cs*を300℃で炭化させたもの(炭化リター)を作成し、実験では炭化リター付着のG-Cs*の溶解度、溶解速度を測定し、且つG-Cs*の物性(熱安定性、機械的安定性)を検討した。溶解度測定はG-Cs*を水に浸漬し、フィルター(平均孔径0.5μm)で濾過し、濾過液のCs*放射線量を測定した。但し、0.5μm以下の顆粒がフィルターを通過しないかチェックをするために、透析膜(平均孔径3nm)を用いて同様の溶解度測定実験も行った。 また、炭化リター付着のG-Cs*をミル破砕し、G-Cs*の溶解度の表面積依存を測定した。それぞれの測定結果(溶解度、溶解速度)は、 ミル破砕なし:0.597(Bq/g), 0.0074 %/day ミル破砕あり: 1.70(Bq/g), 0.090 %/day 透析膜利用:0.076(Bq/g), 0.0067 %/day 結論:1)透析膜利用での非水溶性顆粒状(G-Cs*)は上述の溶解度、溶解速度を持って溶解することが判明。2)G-Cs*を破砕した場合には、破砕しなかった場合より、溶解度が約3倍溶解速度が10倍強の増加があった。これは、G-Cs*はボールミルで破砕され、見掛上G-Cs*の表面積が増加したからで、G-Cs*はボールミルで破砕されることが判明した。3)炭化リター付着のG-Cs*は300℃で作成されたが安定に存在することが判明した。
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