研究実績の概要 |
小型魚類のモデル生物であるメダカ胚は、哺乳類と異なり体外で発生し、かつ脳が透明なので、放射線により脳内へ誘発されたアポトーシス細胞とそれらを貪食するミクログリアの活性化をin vivo イメージングによって非侵襲的・継続的に観察が出来る利点がある。申請者は、これまでの研究において放射線照射後の脳内へ誘発されるアポトーシス細胞の経時変化、およびそれらを貪食・除去するミクログリアの動態に関する全貌を明らかにしてきた。放射線照射後のメダカ胚脳内では、アポトーシスした神経細胞は照射40時間後内に活性化したミクログリアによってすべて貪食・除去されるが、その後もミクログリアの過剰な活性化状態は収まることなく照射後3日間持続していることを見出した。 ミクログリアが活性化して貪食を行うフェーズでは L-plastin遺伝子、貪食が終了するフェーズからApoE遺伝子の発現が上昇する。本申請研究では、L-plastin, ApoE両遺伝子をプロモーターとしたミクログリア活性化の前期と後期をライブイメージングにより可視化できるトランスジェニックメダカTG (L-plastin::EGFP, ApoE::mcherry)を作製することを試みた。TGメダカに使用したSK2系統は色素の多重欠損系統であり、自家蛍光が低いことから蛍光イメージングに極めて有効な系統である。現在、ApoE遺伝子を可視化できるTGメダカの作製に成功し、ミクログリアの活性化が照射3日後以降も継続している可能性を見出した。一方、L-plastin 遺伝子を可視化できるTGメダカは、TGを作製するためのプラスミドが完成し、メダカ一細胞期胚へマイクロインジェクションを試みている段階である。
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